2018.01.15

「出会う、が、世界を変えていく。」──プロダクトが登場しないコーポレート動画をSansanが作った理由

まずは読み進める前に、この動画を、全画面表示&音ありで、最後までご覧ください。

これはSansanのコーポレートサイトに掲載されている動画ですが、プロダクトを紹介するものではなく、なぜ名刺の事業をやっているのかを表現した作品です。なぜこのような動画を作ったのか。観た人に対してどのようなメッセージを伝えたかったのか。ブランドコミュニケーション部の田邉泰と人事部の大間祐太に訊きました。

発端は採用の現場から

議論の発端は、採用の現場で起きていた課題から始まりました。実は、応募の時点で当社の世界観を理解し、入社への温度感が高まっている候補者はそんなに多くはない、と大間は語ります。

「なんとなくITベンチャー界隈では目立った存在である、勢いがあり急成長している、かっこいいミッションを掲げている、といったイメージで応募してくれるんですが、あらためて『実際何やってるんだっけ?』と考えてみれば、名刺管理という一見地味な事業です。つまり、多くの人が半信半疑で面接に来るんです」

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面接官は、「なぜ名刺管理サービスによって世界が変わるのか」を候補者に頑張って説明します。ちなみに大間の決まり文句は、こんな感じです。

わたしたちはビジネスパーソンがつながっていくプラットフォームから、世界中のビジネスシーンを加速していくような新たな価値を生み出していきたいと思っている。例えば、次あなたが会うべき人は誰なのか。誰と会ってどんな話をすべきなのか。そんなものを示唆できるようなプラットフォームが、僕らがいまやっているサービスを土台に生まれていく。なぜなら日々取り込まれる膨大な名刺データからビジネスのつながりを研究、出会いの価値を科学している部署があって…。

この世界観を知ってもらうことができれば、そこに大きな可能性を感じ、志望度もグッと上がる。そんな候補者も非常に多いそうですが、そもそも面接に来てもらってから志望度が上がる状況を大間は問題視しているのです。

「もし応募する手前で、このメッセージを候補者に伝えられたとしたら、採用のコンバージョンは3倍にも4倍にもなるんじゃないか。例えば、動画を制作して採用サイトに載せてみてはどうか。それが当初の構想でした」

しかし、その構想をもとに、以前Eightのプロモーション動画を制作していただいたクリエイティブディレクターの原野守弘さんに相談して、あらためて議論を重ねた結果、最終的には「採用力の向上」を意識した作品にはならなかったと、ブランドコミュニケーション部の田邉泰は振り返ります。

「入り口は採用の課題でしたが、そもそもSansanという存在に興味を持ってもらい、話を聞いてみたいと思わせることが重要ではないか、という結論に至ったのです」

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プロダクトの説明は後でもいい

これまで会社としてのメッセージを発信する場では、最初に「Sansanは名刺管理の会社で、法人向けと個人向けがありまして・・・」とプロダクトの説明から入り、続いて「膨大な名刺データを科学することで世界を変えていきたい」といった流れで説明していました。

しかし、コーポレート動画を使うようになってからは、会社として目指している世界観から伝えられるようになったと田邉は話します。例えば、プロダクトの説明をする前に、次のような話をするようになりました。

人と人の出会いというのはとても素晴らしいものです。Sansanは、その出会いの力で世の中をより良くしていこうとする会社です。ビジネスの出会いのシーンで交換される名刺を、SansanやEightに取り込むことで、一期一会の出会いをその場限りにせず、未来へとつなげていき、偶然の出会いが生み出すイノベーションを後押ししている。具体的なプロダクトとして…。

大間によると、採用の現場でも候補者に対して語りかけるメッセージが変わったそうです。

「例えば、『Sansanのバリューは何ですか?』と面接で聞かれたら、これまでは『価値ある出会いをつくることだ』という説明からは入りませんでしたが、最近は出会う、というところから始まる会話が増えました」

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2019年卒業予定の学生を対象にしたリクルートイベントに登壇した代表の寺田は、コーポレート動画を再生した後に、「出会い」がもたらす価値について語りかけました。イベントのリポート記事はこちら

自慢しても好きになってはもらえない

なにか参考にしたものは? と訊けば、あるとすればアップルやライト兄弟だと田邉は答えます。原野さんも参考にしている「ゴールデンサークル」という理論が、彼らを例にとって説明しているからです。

TEDで過去最も人気のトーク25にランクインしているサイモン・シネックの動画。アップルやライト兄弟などを例に用いて「ゴールデンサークル」という理論を紹介し、WhatやHowではなく、Whyから語り始めることがいかに重要かを説いている。

アップルは、プロダクトを説明するWhatや、仕組みを解説するHowではなく、「なぜやっているのか?」というWhyを語ることを大事にしてきました。その「ゴールデンサークル」の理論によると、これまでのSansanは、プロダクトの説明から始めていたのでWhatから話す方法でした。それが、このコーポレート動画なら、Whyから入ることができます。

「人間関係に置き換えてみればわかりやすいですよ」と田邉は話します。

「ビジネスに限らず、自分のことを『私すごいでしょ!』と自慢する人は、あまり好感度は上がらないですよね。むしろ、『私はこういうものが好きで、こういうことを信じているんですよ』って言う人の方が共感を得やすいものです。だから会社としても、プロダクトの自慢ばかりをするのではなくて、自分たちが信じていることを表現した方がいいんです」

この動画を観た後、HowやWhatをいかに伝えるかが次の大事なポイントになる、と考えた田邉は、早くも次の一手を打とうとしています。

「特に採用サイトで動画を見た後、最初に読むメッセージはとても重要だと思うので、次は採用サイトを刷新します。いままさに急ピッチで動いているところです」

英語のナレーション付きのバージョンも。個人向けのEightは2017年にグローバル版をリリースし、法人向けのSansanとともに海外展開に積極的に挑戦しています。
text: BNL編集長 丸山裕貴

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