広報という言葉の意味を辞書で調べると「ひろく知らせること。また、その知らせ」と記されていますが、Sansanの広報は、ただ知らせることだけではなく、世の中を動かすことにチャレンジしているようです。まず、2人の経歴について聞きました。
プロフィール
小池亮介 ブランドコミュニケーション部 PR Group マネジャー(写真左)
1988年横須賀生まれ。2013年からITに特化した外資系広報代理店にて、広報・PRのキャリアをスタート。B to BからB to Cサービスまで、IT企業の広報業務を幅広く経験。2017年にSansan株式会社に入社し、広報・PRに従事。800名を超える広報のFacebookコミュニティー「広報たん勉強会」運営メンバー。担々麺とギョーザが大好物。
長倉紀子 ブランドコミュニケーション部 PR Group PR担当(写真右)
1982年秋田県生まれ。服飾専門学校を卒業後、PR代理店に入社。米ドーナツチェーンのジャパンローンチPRをはじめ、B to Cの分野でさまざまなクライアントのPRを担当。PR戦略提案からメディアリレーション構築、PRイベント運営など一連の広報業務を経験。その後事業会社に転職し、数社にてファッション、化粧品、雑貨などのブランドPRを担当。2017年、Sansan株式会社に入社。主にコーポレート領域のPRに従事。アサヒスーパードライと焼き鳥が大好物。
ニュースをつくり人を動かす。
PRのおもしろさ
はじめに、Sansan入社までの経歴について教えてください。
私はファッションや美容がもともと好きで、そのジャンルで転職しようと考えていたのですが、「次は代理店ではなく、事業会社で広報をしたい」という思いが少しずつ大きくなっていたこともあり、事業会社の広報で転職を検討しました。
結果、大手美容院にサロンの広報担当として転職し、その後はバッグブランド、メークブランド、雑貨メーカーのPRを経て、約1年前にSansanに来ました。
小池:僕の経歴はけっこうコンパクトでSansanの前は1社のみ。大学院時代に就活もせずにいたら、高校の先輩から「ヒマならインターンをやってみないか」と声をかけられたのが前職のPR代理店でした。
長倉:それがきっかけで、PR業界でのキャリアが始まったのですか?
小池:そう。まずはインターンとして数カ月やってみて、おもしろいと思ったら続けたら? という気軽な感じでした。
外資のIT企業に特化したPR代理店だったので、最初はCADや、セキュリティーソフトといったB to BのITサービスを扱っていました。そのうちITガジェットなどを任されるようになり、初めてB to Cの商材を担当したのが、スマートフォンのモバイルバッテリー。初めて大きな役割をもらったのは2014年に担当した「ドローン」のPRでした。
「ドローン」を担当したことでPRの楽しさにのめり込むようになり、その後もライドシェアアプリやスマートフォン、VRヘッドセットなどを担当し、1年半前にSansanに入社しました。
「ドローン」でPRのおもしろさに目覚めたというのは、具体的に言うと?
小池:当時、世の中的にドローンがまだおもちゃ程度の認識だった頃ですが、その製品の日本でのPRの大部分を任せてもらえてました。そんな自由度の高い状況の中、僕がPR施策を考え、発信することで、担当した製品がドローンコミュニティーの中で話題になったり、ニュースで話題になったり、メディアで連日取り上げられたり、世の中を動かしていると感じられるダイナミックさがおもしろくて仕方なかったんです。長倉さんは? PRのおもしろさを感じた案件ってあります?
長倉:私は最初に担当したのが、世界的に有名なドーナツチェーンだったことが大きいですね。ドーナツの箱を10個抱えて、いろいろな編集部をかけずり回って宣伝して、結果メディアでも大きく取りあげられ、すごく話題になって大成功。
商材がよかったことがラッキーだったのですが、1号店に連日お客様の大行列ができているのを見て、「PRって楽しい!」と感じました。
Sansanの記事を読み、
ここで働きたい!と即決
Sansanを選んだ理由について教えてください。
小池:前職での業務も楽しかったのですが、自分はPRを代行することに向いていないと感じるようになったことが、転職を考えるきっかけでした。僕は、さまざまなクライアントをもって、いろいろな企業や商品をPRするよりも、事業会社のPRとして、もっと商品にコミットしたい、という思いが強くあると気がついたんです。転職にあたっては、もともとお世話になっていた、Sansanの広報部門を立ち上げた日比谷さんに相談しまして。そのとき、事業会社で広報を募集している数社を紹介してもらい、一番楽しそうだと感じたSansanに決めました。
長倉:決め手は何だったんですか?
小池:ひとつは、名刺というトラディショナルなツールを、ITやテクノロジーの力で正しくアップデートする事業に賛同し、自分も関わりたいと思ったからです。
このチャレンジが道半ばという部分にも引かれましたね。そこに自分がいる意味や、やりがいがあると感じました。
あとは人です。面接のときに、部長の田邉とした会話が楽しくて。Sansanは賑やかなベンチャーだと予想していたところを、いい意味で裏切られたと言いますか(笑)。「自分に合いそう」だと感じました。
長倉:私は、あるとき寺田のインタビュー記事を読んでから、まるでその内容に恋をしてしまったかのごとく、Sansanのことばかり考えるようになってしまったんです(笑)。
というのも、その頃、好きな仕事に就いても、家庭の事情だったり、自分ではどうすることもできないことで仕事を諦めなきゃいけないというような出来事がまわりでもいろいろあって。
「働き方改革」というキーワードは盛んにメディアが取り上げているけれど、実際のところどうなっているんだろう? 本当に働き方改革が進んでいるなら、そういった理由でやりたいことを諦める人って減るはずだよね、となんとなく思いました。
そんな理由から、働き方改革に関するニュースや記事を漠然とチェックするようなったんです。そしてたまたま寺田のインタビュー記事に出会いました。それを読んだときに、彼の言う「名刺を起点とした働き方革新」が本当に実現すれば、自ずと世界は大きく変わるはずだと思いました。多くの人が、より少ない時間で本質的な仕事に向き合うことができる。それが当たり前になれば、環境や家庭の事情など外部の要因に自分の働き方が左右されることも少なくなるはず。好きな仕事を諦めなければいけない人も減るのでは...と衝撃を受けて。
Sansanのウェブサイトを見たら、広報担当募集中の文字! すぐにエントリーしました。
PRの仕事は掲載数がゴールじゃない。
その先にある本当の目的
現在の仕事内容について教えてください。
長倉:PRグループは、リーダーの小池を筆頭に現在6名のメンバーがいて、メディア担当とSNS担当にわかれています。私はメディア担当にいますが、Sansanがメディアに対してPRすることは、大きく3つあります。ひとつは「コーポレート」、そして法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」と、個人向け名刺アプリ「Eight」です。私の担当は「コーポレート」なので、会社としての発信や取材に対応しています。
日々のメディア対応に加えて、最近担当した仕事は、神田明神での「名刺納め祭」や表参道でのブランディング施策「Sansan in 表参道」プロジェクトですね。このプロジェクトでは、『VOGUE』が主宰する「VOGUE FASHION’S NIGHT OUT 2018」に協賛し、「待ち合わせ場所をプロデュースする」企画を担当しました。
小池:僕は「Sansan」「Eight」のPRに加えて、PRグループのリーダーとしてマネジメントを行っています。
実際に働いてみて、他社との違いについてはどう感じましたか?
長倉:想像以上に個人やチームの裁量が大きいこと。会社のためになると感じ、明確な目的と意図を持って伝えれば、上司は後押ししてくれます。「メディアに出たからといってすぐに成果は出ないけど、地道にやり続けていくことが大事」
これはPR業界で本当によく聞く言葉ですが、僕はそれだけでは駄目だと思っています。どうコミットして、どう世の中を動かしているか、ある程度の成果まで見据えてPRすることがとても重要だと思いますね。
社長とのランチ中に生まれた
「Sansan in 表参道」プロジェクト
楽しかったことや辛かったことなど、これまでの仕事の中で印象に残っていることについて教えてください。
小池:はいどうぞ(笑)。
長倉:私は、2017年の11月に入社したのですが、入社後すぐに小池から「来月の『名刺納め祭』お願いね」と言われたんです。決まっていることは1カ月後に決行することのみで、あとはほぼ白紙状態で「うそー!」と思いました(笑)。
何とか着地させた今、振り返れば、メンバーと早い段階でコミュニケーションできて、Sansanのスピード感をすぐに体感できたことはよかったと思います。当時は戸惑いの連続でしたが。
小池:長倉さんのおかげで、NHKをはじめとするさまざまなメディアで取り上げられたことで、社内でも評判になりました。
2018年はほかの部も巻き込んで開催されることが決まり、まさにPRの先につながるイベントになったよね。あのとき、全力で長倉さんにパスを出してよかった(笑)。
名刺納め祭 2018 photo: 山平敦史
長倉:もうひとつは、今取り組んでいる「Sansan in 表参道」プロジェクトです。小池:そもそも、社内制度の「テランチ」にも企画の始まりがありますよね。
テランチとは、希望したメンバーが、代表の寺田と昼食を取りながら自由にコミュニケーション(意見交換)できる場を設ける制度。メンバーのパフォーマンス向上・成長機会を見出す場とすることを目的としている。
小池:その後、ブランドコミュニケーション部の部長でクリエイティブディレクターの田邉を中心にコンセプトを固めて、プロジェクトが始まりました。表参道駅をジャックして、フリーペーパーを作って、一連の取り組みを雑誌『BRUTUS』に載せてと、いくつもの仕掛けを横断的に作って、今も動いています。
表参道交差点と南青山五丁目交差点(青山通りと骨董通りの交差点)に掲出した屋外広告。photo: 山平敦史
「VOGUE FASHION’S NIGHT OUT 2018」と協賛して、待ち合わせ場所をプロデュースするというアイデアは、僕からは決して出ないアイデアだと思います。ファッションイベントに名刺管理の会社がなぜ!? と一見かけ離れていそうに見えますが、Sansanは名刺を通して「出会い」の価値を最大化することもミッション。待ち合わせという出会いの場所をプロデュースすることは、理にかなっているんです。
VOGUE FASHION’S NIGHT OUT 2018の一コマ。植野有砂さんとコラボレーションした。
長倉:小池さんの印象に残っていることは?小池:難しいですね。どの仕事も楽しいこともあれば大変なこともあって、その時は「やりきった!」と思って達成感もある。けれどそれを後々まで「あれはよかったな」と引っ張ることはないです。
それよりもPRメンバーの潜在能力を最大限に引き出すことができたら、まだまだいろいろなことがやれるなと。そういう環境づくりをして、それを実感する瞬間を想像すると、とてもワクワクしますね。
強みを活かしてほしい。
そのためのチームづくり
PR Groupではメンバー同士どのようなコミュニケーションがあるのでしょうか。
長倉:定例会でタスクを共有、月1回のチームランチに加え、最近始まったのが、週に15分程度、リーダーの小池と話す「1 on 1」です。小池:1 on 1を始めたのは、チーム全体が忙しい今、一人で抱えている悩みがあるかもしれないと感じたからです。
決まった時間を設ければ、言いやすいし、一人で悩むより、対話することで、滞っていたことが進む可能性もあります。
長倉:確かに、全員でのミーティングだと案件の共有がメインなので、もう少し踏み込んだ話が1 on 1でできるのはありがたいです。話し合ったことでそれが突破口になったことは何度もありますね。
小池:僕は今後PR Groupは、成果が出せる前提で、やりたいことに全力で動くことがいいと思っています。Sansanで働いている時点でSansanのカルチャーに合うことや、能力の高さはわかっているのだから、ならば思い切りその資質を伸ばせる環境をつくろうって。業務が立て込んでいると、やりたいことを言い出せない、もしくは自分のやりたいことは何だろうという問いすら生まれない環境に陥ってしまいがちです。
今のメンバーが同じ時期、同じ場所に集まって、同じ方向を向いて仕事をしていることが、すごく特別なことだと思うんですよ。
それを例えば数年後「あの時は忙しかったね」だけで終わらせてはもったいない。今、6人のPRがいますが、この人数はベンチャー企業としてはありえない規模だと思いますし、その環境を最大限生かした仕事をしたいと考えています。
これから先、どんなことに挑戦してみたいですか?
長倉:たくさんありますが、まずは私はメディア関係の方々に、もっと自分から会いにいきたいですね。直接会ってお話すると、メールやオンラインのコミュニケーションだけではわからなかったことが見えたり、刺激をもらえたりします。会って感じたことをベースにアイデアを練りたいです。小池:少し大きな話ですが、世界三大広告賞のひとつと言われる「カンヌライオンズ」のPR賞を取りたい。こんな風に言うとミーハーだと思われるかもしれませんが、受賞式を見ているといつも駆り立てられるんです。受賞作品は消費者のインサイトを突く、すばらしい施策ばかり。そんなアイデアをとことん考えてみたいですね。
Sansanのブランドコミュニケーション部にはデザイナーもディレクターもいて、僕らには自由も権限も与えられています。つまり、おもしろいことをやろうと思えばできる、恵まれた環境があるんですよね。
そこに身を置きながら形にできていない今の自分にふがいなさも感じます。PR業界全体が潮目を迎えている今、もっとトライ&エラーを繰り返し、新しいPRの形を構築していきたいです。
アピールも言い訳も必要なし。
本質を見抜かれ評価される
評価制度についても教えてください。
小池:単純にメディアなどへの掲載数だけで評価が上がることはありません。能動的に動いているか、意図をもって動いているか、失敗したときのマイナス面よりも、挑戦するときに、どう人を巻き込むかを重要視しています。長倉:本当にそうですね。多くを語らずとも、誰が何をやっているかはすごく見られている感じがします。失敗したときの言い訳も、これだけ成果を出しました!というアピールも必要ないくらい、本質を見られている感じはあります。
小池:逆にそういう人が上にいるからこそ、僕らは評価うんぬんを気にする無駄なエネルギーを使わず、自分の業務に集中して、思い切り走っていられるのだと思います。
キャリアアップについてはどう考えていますか。
小池:僕の肩書はグループリーダーですが、それはツールでしかないと思っています。なぜリーダーを引き受けたかと言えば、当時たった2人だったPRがチームとなり、組織になったということを他部署に示し、チームとしてのバリューを高めたかったらです。リーダーというのは単に組織上の一機能でしかなく、本来は一人ひとりがPRのプロとして個々に振る舞えばいいのだと思っています。逆に肩書にしがみつき出したら自分に対して危機感を覚えますね。長倉:私も肩書きを得るために仕事を頑張るというスタンスではありませんが、自分の思い描く仕事がよりやりやすくなるのならば、その役職をやりたいと思っています。一方で、評価としての給与についてはモチベーションのひとつですし、上を目指したいと思っています。Sansanにはやっただけ評価してもらえる土壌があると思いますし、今後転職してこられる方はその点においても納得感があると思いますよ。
自ら考え、形にできる人に新たなメンバーとしてチームに加わってもらいたい
PR Groupに加わってもらうならどういう人と働きたいですか。その方にどんな活躍を期待していますか。
小池:ひと言で言うなら「勝手に走れる人」。会社のためにやるべきだと思えることを、自分で考え形にできる人ですね。PRの仕事はマーケティング、広告、イベント等範囲が広いもので、根底にパブリックとのリレーションづくりがあればどんな手を打つ事もできます。そのことを理解している人を求めています。長倉:それに加えて、何かひとつ好きな事や、得意なことを持っている人がいいですね。音楽や漫画、何でもいいのですが、これなら誰にも負けないというものがあって、それを強みとして活かせる人。
小池:面接では、ブランドを育てていける人であるかを見ます。PRには、ブランドを高められる人もいれば、逆にブランドを消費してしまう人もいるんです。世間ではバズると言われている手法でも、Sansanとは合わないものもあって、そこを理解しないままインパクトだけの手法に凝ったり、トレンドの施策に溺れたりしてしまうと、ブランドは育たないばかりか、これまでに築いてきた価値をも破壊してしまいます。 そうではなく、例えばこれまでになかったやり方、一般ではNGと言われている手法でも、そこから新しい道をつくっていける人と働きたいですね。
長倉:大前提ですが、人の気持ちがわかるということも大事。PRは、何をしたら人がどう感じ、どう動いてくれるかを想像しながらコミュニケーションを考えるので、人の気持ちがわかることはとても大切だと思います。
小池:みんな、自分が人生の主人公を生きるなかで、その人たちに僕らの伝えたいことをいかに自然になじませて発信するかは、社会と会社の間に立つPRパーソンが考えなくてはならないこと。そこを理解できる人と楽しく働けたらうれしいですし、僕らもコミュニケーションのプロとしてこれからも考え続けていきたいです。
取材後記
Sansanというブランドを育てることにつながれば、一般的にNGと言われている手法でもチャレンジできる。名刺という一見地味なツールと「表参道」を組み合わせたり、生活やファッションと掛け合せたりするなど、改めてPR Groupのクリエイティブ力の高さと実行力を感じました。
SansanのPR Groupが、今後Sansanと社会をどのようにつなげ、どんなインパクトを与えていくのか楽しみです。
現在、Sansanではメンバーを募集しています。ご興味を持たれた方は、ぜひ採用情報をご覧ください。
interview: 人事部 杉本裕樹 text: 大庭典子 photo: ブランドコミュニケーション部 高橋淳