日本中のエンジニアが集まる場「Builders Box」プロジェクト

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2020/08/17

こんにちは、人事部の杉本裕樹です。今回インタビューするのは、Sansan株式会社のCTO(Chief Technology Officer)藤倉成太です。CTOとしてSansanの技術をリードする彼が、さらに一歩先に踏み込んで「日本のエンジニアリングが世界中で活躍できる未来をつくる」と立ち上げたプロジェクト「Builders Box」。どんな思いから生まれたプロジェクトなのか、その内容を存分に語ります。まずは藤倉のこれまでの生き方をひもときます。

プロフィール

藤倉成太
執行役員 Chief Technology Officer

株式会社オージス総研でシリコンバレーに赴任し、現地ベンチャー企業との共同開発事業に携わる。帰国後は開発ツールなどの技術開発に従事する傍ら、金沢工業大学大学院工学研究科知的創造システム専攻を修了。2009年にSansan株式会社へ入社。現在はCTOとして、全社の技術戦略を指揮する。


すべての内定を断り、路線を変更

藤倉さんがエンジニアになるきっかけは何だったのでしょう?

小学5年生くらいからプログラミングが趣味で、機械いじりも大好きな子供でした。テレビが壊れたりすると喜んで分解して修理するくらいに。

そのまま成長し、大学時代までは、将来は人型ロボットを作りたいと思っていたんです。当時は人型のロボットなんてあまりなかったですし、ものづくりの最高峰という感じがして、かっこいいと思っていました。そんな思いから、大学は理工学部精密機械工学科というところに進みました。

大学でその考えが変わったのですか?

そうですね、将来はおぼろげながら見えているレールに乗っかろうかなとハードウエアのエンジニアになろうと、就活は製造業を中心に行い、5社ほどから内定をもらいましたが……。

何かあったのですか?

いざ内定承諾する会社を決める段階になり、情報収集としてOB訪問をしたのですが、子供の頃から持っていた、ハードウエアエンジニアのイメージとかけ離れていて「自分には無理だ」と思っちゃったんです。

これは感覚的なことですが、私は自分の感覚は割と信じているので、すぐにすべての内定をお断りしました。

急展開ですね。その後はどうしたのですか?

私が就活をしていたのは98年で、その年はGoogleや楽天が創業した年なんですね。そんな時流と自分がプログラミングが好きだったことが重なり、ソフトウエア産業について調べていくうちに、シリコンバレーで働いてみたい、好きなことを追求して、そこで超一流と呼ばれるエンジニアになろうと目標が変わりました。

そしてアメリカに子会社をもつSlerに就職。実際に4年後にシリコンバレーに行くことになりました。


シリコンバレーから戻り
ぶつかった壁

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思い描いていた通りになったのですね。

これは本当にラッキーだったと思います。入社後、私は海外製ミドルウエアの導入コンサルティングや技術サポートをしていたのですが、ある日話したこともない上司に呼び出されたんです。

開口一番「アメリカで欠員が出た」と。「何人かのマネジャーからお前を行かせたいという声が出てるが、行くか?」と。迷わず二つ返事で行きたいと伝え、翌週には渡米しました。

シリコンバレーでは、製品や技術のリサーチや、現地のベンチャー企業と共同開発や研究を行っていたのですが、その中で何度もエンジニアが本気で「自分たちが作ったプロダクトで世界を変えたい」というものすごい熱量に触れたんです。そして、その熱意は本当にすてきだなと感じたんです。この考えは今でも私の意思決定に大きく影響しています。

シリコンバレーで3年ほど働いた後、やってきたことが形になったこともあり、次はそれを国内のビジネスにつなぐ役割を果たすために帰国しました。ですが、帰国後国内での仕事に着手すると、ある壁にぶつかりました。

なにがあったのですか?

シリコンバレーでは、リサーチやテクノロジーを育てることはしていましたが、帰国しそれらを案件に結びつけるとなると、これまでの技術への課題とは全く違う経営に対する知識や視点を必要とする現実を目の当たりにしました。

帰国後まもなく、国内で大手顧客の経営陣と話しているとき、いったい彼らが何を話しているのか、経営の専門用語の意味もわからなければ、話している内容にもまったくついていけないという苦い体験をしました。これではいけないと、仕事をしながら金沢工業大学大学院(現・KIT虎ノ門大学院)に通い、経営やビジネスについて学びました。

そして大学院を修了したのと同時に再び人手が足りないとアメリカの事務所から声がかかり渡米。そこから数年たち、仕事を辞める決意をします。

なぜ辞めることに?

ある日、テレビを見ているとき、あるプラットフォームを立ち上げた夫婦が取り上げられていたんです。彼らは働きながら、夜な夜なビジネスプランを練ってシステムを開発し、半年かけて実際に立ち上げたという話でしたが、それを見たとき「俺なら一カ月かからないな」と思ったんです。

そしてその瞬間ハッとしました。「俺、最低だな」って。

実際に世界を変えようと行動している人に対して、安全な外野から口出ししている自分がとても情けなかった。技術だけを追求していてはだめだと自分でプロダクト作っていこうと決め、翌週には退職の意思を伝え、半年後に辞めました。


「この会社なら自分の時間を使ってもいい」

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そして2009年、Sansan株式会社へ。

転職は「この会社になら自分の時間を使ってやってもいいと思えるところに行こう」と考えていました。年齢も年齢なので、一般的な面接のフローを流されても困ると、あらかじめ「一般的な面接とか選考会とかはやめてください。最初から代表に会わせてもらいたい。その上で私がジャッジしたいので」と伝えました。今思い返しても生意気な32歳だと思います(笑)。

幸いなことにいくつかの企業で面接も行ったのですが、イベントでSansanと出会い、代表の寺田の話を聞いて「ここだ」と決めました。ここなら自分の時間を使ってもいいと思ったんです。

その決め手は何だったのですか?

ベンチャービジネスは大きなビジョンがないとダメだと思うんです。加えて同時に「じゃあそのために今日、明日は何するの」という具体的な道筋も必要。Sansanには「世界を変えよう」って大きなビジョンがあって、じゃあ今日明日に何するといったら「面倒くさい名刺管理に対する解を出す」という具体的な道筋があって、パッションとサービスを作り上げるロジックがうまく噛みあってると感じました。

現在CTOという立場で取り組んでいる仕事について教えてください。

抽象的な言い方になりますが、会社のミッションの実現に向けて、技術の力で形にすることです。客観的に見ても当社のエンジニアは本当に優秀なので、日々のプロダクトの進化に関する意思決定は現場に任せています。

私は同じチームにいるCPOの大津と、彼の描くビジョンをテクノロジーの観点から話し合ったり、もしくはテクノロジーから発想して、プロダクトの方向性について議論したりしています。

マネジメントラインにも力を入れたいと思っています。エンジニアのマネジメントは、やはりそのコツがつかめないと苦労します。私もいちエンジニアとして入社し、次のステップとして開発部長になった頃は散々でした。求められるものも高ければ、極めて曖昧とも言える挑戦をしっかりとした形にするのは、とても難易度が高いことなんです。その苦労を知るものとして、自分なりに導き出した方程式のようなものを伝えたいと思っています。

あとは現在多くの時間を使っているのが採用ですね。当社はグローバルでインパクトを出そうと日々奮闘していますが、プロダクトだけでなく、そのための組織もグローバルレベルまで引き上げなければ、と急いでいます。

Sansanのエンジニアを外にアピールし、採用をどう加速させるかは、自分の守備範囲であり役割です。これまでさまざまな施策に取り組みましたが、それも一定の形になりつつあり、仕組みもできました。これは今後も継続しつつ、同時にもう一歩先のところに頭や時間を使いたいなという気持ちもあり、そこから始まったのが、「Builders Box」というプロジェクトです。


エンジニアのための
情報サブスクリプションBuilders Box

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Builders Boxが生まれた背景を教えてください。

これはSansanに限らず、日本にいるエンジニア全般に対して言えることですが、彼らの技術はすごく高いと思っています。実際にシリコンバレーで働いてみて「ここでやっていける」「通用する」という感触がありました。これは私が優秀かうんぬんの話ではなく、日本のエンジニアのレベルが高いということ。

でも現実としては、日本のソフトウエアプロダクトが世界中でインパクトを出しているか、使われているかと言うと、残念ながらそうとは言えない。その現実もシビアに踏まえながら、「Builders Box」では、自社のエンジニアだけでなく、日本中のエンジニアに対して情報を交換する場をつくり、学習や体験の機会を提供するなど、さまざまな活動を通して、エンジニアの技術や視座を上げていきたいと言うのが大きな目標です。

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具体的な活動としてはどんなことを?

一つはエンジニアに有益なコンテンツをメディアサイトで毎月配信しています。もう一つは8月30日に行う、オンラインでのイベント「Builders Box – ON AIR」です。

先ほどからグローバルと言う言葉を使っていますが、一方でグローバルと必要以上に言う必要はない、ボーダーを意識しないことも大事だとも思っています。日本だろうが海外だろうが、すごい人はすごいでいいんじゃないかと。このイベントではそんなすごい人の話が聞きたいという思いから、デイビッド・スコット・バーンスタインさんに登壇してもらいます。

彼のことは、知っている人も多いと思いますが、2020年の上半期にIT系の書籍で大きな話題となった『レガシーコードからの脱却(オライリー・ジャパン)』の著者です。

そして、この本の翻訳を手掛けたチームを率いる、原田騎郎さんにも登壇してもらいます。

実は、偶然にも原田さんは前職の会社の先輩だったんです。プロジェクトチームのメンバーに翻訳者とアポイントを取りたいと言われて初めて名前を見て、驚きました。そんな偶然もあって私自身もイベントが楽しみです。

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イベントの詳細はこちら

今後「Builders Box」をどのようにしていきたいですか?

今の状況でできることは限定的ですが、今後、数千、数万という多くの優秀なエンジニアが「Builders Box」に入り、日本のエンジニアのレベルが上がっていくような環境をつくっていきたい。そして今の状況が変わって、オフラインで集まることが許されるようになったら、万の単位のエンジニアを集結させて何かできたら面白いなと思います。 


インタビュー後記

かつてシリコンバレーに駐在した経験、そこで感じた自身と日本のエンジニアやプロダクトの理想的なあり方が、Builders Boxにつながっていると感じました。

8月30日に開催する、オンラインイベントBuilders Box – ON AIRの参加申し込みや詳細の確認は、こちらのイベントサイトからどうぞ。

https://buildersbox-online.com/event.html


開催概要

Builders Box – ON AIR
日時:2020年8月30日(日)10:00 – 11:30
開催場所:オンライン
特設サイト:https://buildersbox-online.com/event.html
参加費:無料(事前登録制)

皆さまのご参加をお待ちしています。
interview: 人事部 杉本裕樹 text: 大庭典子 photo: 人事部 高橋淳

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