2026年4月、Sansan株式会社は2027年度入社の新卒給与を年収586万円へ引き上げることを発表しました。住宅補助などの諸手当を含めると、実質的な年収は初年度から約640万円に。さらに、新卒だけでなく全社の給与テーブルの見直しも同時に行います。
ビジネスにおけるAI活用が急速に進んでいることで、新卒採用を縮小する企業も増えている昨今。「新卒不要論」さえささやかれる今、なぜSansanは採用を拡大し、待遇を引き上げるのか。CHRO(最高人事責任者)の大間に、この決断の背景と、Sansanが若手人材に期待することを聞きました。
記事の後半では、新卒入社3年目でマネジャーとして活躍する営業の小川と、エンジニアからPdM(プロダクトマネジャー)へと転身した阿左見にインタビュー。「新卒としてSansanで働いたリアルな経験」を語ってもらいました。
PROFILE
大間 祐太Yuta Ohma
取締役/執行役員/CHRO(Chief Human Resources Officer)
人材系企業で採用コンサルティング事業の立ち上げを経験し、その後独立。取締役として採用領域のベンチャー企業立ち上げに携わる。2010年にSansan株式会社へ入社し、営業部門のマネジャー、人事部長を務める。現在はCHROとして、人材価値を高めるための人事戦略を指揮する。
年収640万円、採用170名。
「新卒不要論」の時代に、Sansanが出した答え
今回の給与改定の概要を教えてください。
2027年度に入社する新卒社員の給与を、年収568万円から586万円へ引き上げます。住宅費用補助制度「H2O」や、出社でのコミュニケーションを促進する「オフィス+」といった手当を合わせると、実質的な年収は初年度から約640万円になります。
エンジニアや研究開発職については、経験やスキルを個別に評価します。すでに年収1,000万円超のオファーを出した実績もあり、引き続きその方針で対応していきます。
また、今回の改定の対象は新卒だけではなく、全社の給与テーブルの見直しも同時に行っています。既存社員に対しても、AIを活用して生産性をさらに高めていくことを求めていますし、それに応えてくれているメンバーへの期待は、新卒社員と何ら変わりません。AI時代だからこそ、人の力がますます重要になっていると私たちは考えており、その表れが今回の全社的な給与改定です。
採用人数も増やすとのことですね。
はい。2027年度は過去最高となる170名の採用を予定しています。生成AIの普及によって、簡単な資料や議事録の作成といったエントリーレベルの業務はAIが代替できるようになりました。それにより、新卒採用を縮小する企業も増えていますし、中には「新卒不要論」を掲げる企業も出てきました。そんな中で、私たちはむしろ採用を拡大する方向を選んでいます。
なぜ、逆張りともいえるこの決断をしたのでしょうか。
「AIが仕事を奪うのではなく、AIを使いこなす人が仕事を変えていく」。これが今起きていることの本質だと思っています。
確かに、エントリーレベルの仕事は急速になくなりつつあります。アメリカでは新卒採用が25%程度減少しているとも言われています。議事録はAIが作り、資料もAIが下書きをする。「雑用から仕事を覚える」という従来の新卒育成モデルは、もう通用しない時代です。
ただ、見方を変えれば、これは大きなチャンスでもあります。かつて2〜3年かけて習得していたことも、AIをレバレッジとして活用すれば入社初日から習得でき、はるか先のステージからスタートできる可能性があります。
今の新卒世代は、AIを前提に学び、アウトプットを行う「AIネイティブ世代」です。短期間で専門性を獲得し、領域を越えて価値を生み出す可能性を持っている。今回の給与引き上げは、その世代に対する経営としての期待の表明でもあります。
AIを使いこなせるだけでは、足りない。
Sansanが次世代のメンバーに求めるもの
AIを使いこなすことのほかに、社員に期待することはなんですか。
社内の生成AI活用率は、2025年4月時点ですでに99%※に達しています。定型業務の効率化は急速に進んでいて、この流れは不可逆です。しかし、だからこそAIには代替できない「人間力」が不可欠です。
他者を巻き込みながら合意を形成する力、非定型な状況で意思を持って判断する力——こうした「人間力」が、これからの組織の競争力を決定づけると私たちは考えています。技術を使いこなす力と、高いEQ(Emotional Intelligence Quotient/心の知能指数)を兼ね備えた人材こそが、次世代のSansanをけん引する存在になっていくでしょう。
※ Sansan株式会社「Sansan、社員の生成AI活用率99%を達成。非エンジニア含む全職種が業務に活用」(2025年5月14日発表)
https://jp.corp-sansan.com/news/2025/0514.html
このタイミングで給与改定に踏み切った背景には、「課題」もあったのでしょうか。
正直に言えば、あります。外資系企業やコンサルティングファームからも内定を得ているような優秀な学生に、Sansanを選んでもらうためには、待遇面の差を埋めることも必要です。優秀な人材には、今後も適切な投資を行います。
待遇だけではありません。2025年、Sansanは「AIファースト」を年間テーマに掲げ、AI活用を強力に推進してきました。今、Sansanは国内でも有数のAI活用企業になっていると自負しています。定型業務を徹底的に効率化し、入社後間もない段階からより本質的な業務に挑戦することができる。グローバル水準でも引けをとらない成長環境があると考えています。
決められたキャリアパスはない。
だからこそ、意志があれば強いキャリアを築ける
Sansanが求める人材像を教えてください。
AIという強力なレバレッジを使いこなす力と高い人間力を兼ね備え、組織と社会に非連続な変化をもたらしたいという意志を持つ、次世代のリーダーとなる人材です。「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションに共感し、5年後、10年後のSansanをけん引していく覚悟がある人に来てほしいと思っています。
「意思のないところに、道はない」というのが私の信念です。自分がどう動きたいか、何を実現したいかを自分自身で決められる人と、一緒に仕事がしたい。そういう人こそが、Sansanで本当に活躍できると思っています。
入社後、Sansanではどのようなキャリアを築けますか。
Sansanには、決められたキャリアパスがありません。何を成し遂げたいか、そのためにどう動くか——それを自分自身で決め、実行できる人間が、ここでは正当に評価されます。
先ほど触れたように、入社直後からAIを活用した業務が当たり前の環境があり、全社員を対象としたAI研修や、社内ツールへの生成AIの組み込みも進んでいます。ただ、それはあくまで「武器」です。その武器を使って何をするかは、自分次第です。
実際に、新卒入社2年ほどでマネジャーになったメンバーも、入社数年でPdMを担うエンジニアも、Sansanにはいます。会社が用意したレールの上を歩いた結果ではなく、自分の意志で動き、成果を出し続けた結果です。この後に語ってもらう2人も、まさにそういうメンバーです。
給与の引き上げは入口の話にすぎません。ここで何を成し遂げるか、どれだけ成果を出し成長できるかは、本人の意志と行動が決めます。意志を持って動ける人にとって、Sansanは本当に大きな舞台です。その舞台で全力を出し切れる人に、ぜひ来てほしいと思っています。
新卒2年でマネジャーに。「挫折」を成長のドライバーに
教員を目指していた大学院生が、なぜSansanの営業職を選んだのか。そして入社わずか2年ほどでマネジャーに就任できたのはなぜか。2023年新卒入社の小川に聞きました。
PROFILE
小川 美菜Mina Ogawa
Contract One Unit セールスグループ アシスタントグループマネジャー
2023年新卒入社。東北エリアの500名以下の企業を対象にビジネスデータベース「Sansan」の新規営業を担当し、同年12月より取引管理サービス「Contract One」を扱う営業チームへ異動。2年目ながら着実に成果を重ね、2024年12月にSVS(Sansan Values Star/半期に一度授与される社内MVP)を受賞。2025年6月からはアシスタントグループマネジャーを務める。
現在の業務内容を教えてください。
Contract One Unitの営業部門のマネジャーとして、現在は計5名のメンバーのマネジメントを行っています。
就職活動では、どのような企業を検討していましたか?
実は、民間企業に就職するつもりはなかったんです。大学・大学院では教育を専攻していて、卒業後は教員になるつもりでした。でも学校現場で働きながら研究をするうちに、「20代のうちに、自分のコンフォートゾーンを出る経験をした方がいいのかもしれない」と思うようになり就活を始めました。
業界は絞らずに、コンサル、メガベンチャー、人材、IT系など幅広く説明会に参加しました。ただ共通していたのは「無形商材」を扱う会社だったこと。先生という仕事とどこか通じるものを感じていたのかもしれません。
Sansanへの入社の決め手は何でしたか?
就活の軸だった「コンフォートゾーンを出る」ことが、Sansanで実現できると感じたからです。自分より能力の高い人たちの中に飛び込んで、挫折も経験できる環境があると思いました。
加えて、ミッションの達成に向かってみんなが熱量を持って働いているという雰囲気も、強く響きました。
入社前のイメージとのギャップはありましたか?
教員を目指していたこともあって、正直なところ営業職に対して「自分の数字だけを追いかける仕事」というイメージがあったんです。でも実際に入社してみると、みんながミッションという共通の目標に向かって、チームで戦っている感覚がある。数字を追いかける要素はもちろんあるんですが、それ以上に一体感があって、毎日楽しいと思えています。
最初の配属はどんな環境でしたか?
入社直後は「TOPGUN」という新卒ビジネス職向け育成プログラムで、ビジネスデータベース「Sansan」を地方企業に向けて販売する営業を担当しました。実際に東北に住んで、インサイドセールスを行いました。
インターン経験がゼロだったので、営業の進め方もインサイドセールスも何も分からないところからのスタートでした。最初は担当者に取り次いですらもらえませんでしたが、試行錯誤を重ねるうちに少しずつアポが取れるようになっていきました。達成感と、同じ目標に向かって頑張る仲間がいる環境が、本当に楽しかったです。
短期間でマネジャーを任せられるほど成長できた要因は何だと思いますか?
一つ目は、自分の能力よりも難易度の高い課題を常に与えてもらえる環境があったこと。二つ目は、自分自身でPDCAを回し続けたことです。
特にContract One Unitに配属されてプレイヤーとして動き始めてから、「押すことが苦手」で「クロージングが怖い」という壁に何度もぶつかりました。でもその度に、商談での反応をメモして振り返り、少しずつ成功体験を積み重ねていきました。理論として教わることと実際に体得することは別物で、成長は経験の蓄積から生まれると実感しています。
最後に、「Sansanを選ぶべき人の条件」を3つ挙げるとしたら?
まずは「成長したい人」。次に「ミッションに向かってチームで頑張れる人」。自分だけの数字が取れればいいという人よりも、仲間と一緒に結果を出すことに喜びを感じられる人が向いていると思います。三つ目は「ワクワクしながら働きたい人」。楽しみながら仕事ができる環境が、Sansanにはあると思っています。
エンジニアからPdMへ。
「何でもやっていい」環境が自分を変えた
「エンジニアはいつかやめます」と言って入社し、数年後にPdMへ。自ら影響範囲を広げ続けてきた2023年新卒入社の阿左見に、そのキャリアの軌跡を聞きました。
PROFILE
阿左見 蓮Ren Asami
技術本部 Bill One Service Platform プロダクト開発部 Workflowグループ
2023年新卒入社。入社前から約1年間インターンとして従事したのち、エンジニアとして入社。経理AXサービス「Bill One」のフリーミアムプランの開発を皮切りに、仕訳、請求書受領、汎用ワークフローの立ち上げまで、Bill Oneのコア機能の開発を幅広く担う。現在はPdMとしてプロダクトの方向性と開発ロードマップの策定にも携わっている。
現在の業務内容を教えてください。
エンジニアとして技術本部に所属しながら、実質的にはPdMとして動いています。具体的には、どんな機能を作るか、どういうロードマップで開発を進めるかを決め、エンジニアやデザイナーと協力してプロダクトを作っています。
就職活動はどのように進めましたか?
あまり広く就活はしていませんでした。エンジニアという時点でターゲットにできる会社がある程度絞られますし、学生時代にアルバイトで得ていた時給を基準に年収などの条件を設定すると、さらに候補は少なくなりました。最終的に受けたのはSansanを含めて4〜5社ほどです。
Sansanとの出会いは、研究室の先輩に「いいインターンがある」と教えてもらったことがきっかけでした。当時はBill Oneの存在も知らず、「名刺管理の会社」というイメージすらぼんやりしていましたが、2週間のインターンに参加して、そのまま内定に至りました。
入社の決め手は何でしたか?
BtoB領域に挑戦したかったというのは明確な理由としてあります。業務に深く組み込まれて長く使われるのもBtoBソフトウエアの特徴で、一人ひとりのユーザーに届く価値の大きさが桁違いなんですよね。そういう、社会の基盤になっていくようなプロダクトに携わりたいという気持ちがありました。
入社後のギャップはありましたか?
BtoBと聞くと堅いイメージがありましたが、実際は全然そんなことなくて。働いている人たちの雰囲気もフランクでした。
プロダクトごとに文化は異なりますが、Bill Oneはとにかくスピード感があって、「前に進もう」という空気がある。それは良い意味でのカルチャーショックでした。
エンジニアからPdMに転身した理由や経緯を教えてください。
実は、入社当初からエンジニアを長く続けるつもりはありませんでした。最終面接でも「エンジニアはいつかやめます」と伝えていたくらいで。
プログラミング自体は好きで、プライベートでコードを書いたりはしています。ただ、自分がやりたいことを突き詰めていくと、ユーザーと向き合ったり、何を作るかを意思決定したりといった仕事に面白さを感じていることに気づきました。インターン時代から別会社でビジネス職の動きも経験していたこともあって、自然とその方向に引き寄せられていった感じです。
明確な転換点があったというより、「開発要件で足りない部分があれば、自分で埋めます」とやっているうちに、自然とPdMの動きになっていました。「影響範囲を広げていった」という表現が一番近いかもしれません。
成長できた要因は何だと思いますか?
一番大きいのは「チャレンジできる環境があったこと」です。打席に立たなければヒットは生まれない。1年目から手を挙げればチャレンジさせてもらえる環境で、それが成長を加速させてくれたと思っています。
エンジニア出身のPdMであることは、確かな強みになっています。開発の技術的な話をエンジニアと対等に議論できますし、何を作るか決める時にも実装可能性を踏まえた判断ができる。フロントエンドも、バックエンドも、インフラも、一通り経験できたことは本当に良かったと思っています。
「Sansanを選ぶべき人の条件」を3つ挙げるとしたら?
一つ目は「自分から手を挙げてやりたいことを見つけられる人」。たとえ能力があっても、手を挙げなければ打席は減ります。二つ目は「いろんな領域の人と協力してプロダクトを作りたい人」。エンジニアであっても、デザイナーやPdMと密に連携する場面が多いので、コミュニケーションの範囲を広げることが楽しめる人が向いています。
最後は、「スピードと品質を両立することに挑戦したい人」。速く良いものを作るという難題に、やりがいを感じられる人にとっては最高の環境だと感じています。
3人の話を通じて見えてきたのは、一貫した軸でした。「意志のないところに、道はない」——大間が語ったこの言葉は、小川と阿左見の歩みそのものを表しています。決められたレールはない。だからこそ、自分の意志で動いたメンバーが、最も速く、最も遠くへ行ける。それがSansanという舞台の本質だと感じました。