「グロースマインドセット」この言葉を2024年のテーマにしようと思います。
グロースマインドセットとは何か。私が最近感じているのは、「とある世の中的に成功している人」に対して、「成長してそこまでたどり着いたのだろう」と思うのか、あるいは「生まれ持った才能を発揮したのだろう」と思うのか。その違いが、グロースマインドセットと、その反対のフィックストマインドセットとを分けるポイントだと感じています。
どちらもいいと思うし、誰しも自然に両方の感覚を持っていると思います。
「自分には生まれ持った力がある」と信じたい気持ちもある。そう信じるからこそ頑張れる面もある。だから、この人は100%グロースマインドセット、100%フィックストマインドセットっていう割り切りではないと思いますが、真に成長して社会に対して何かを成していく人は、グロースマインドセットが優勢なんじゃないかと思います。
私自身、10代、20代の頃はフィックストマインドセットが強かったなと思います。
むしろSansanを創業し、さまざまなことに立ち向かう中で、自分自身のグロースマインドセットが培われて、会社の成長とともに育ってきました。
よくあるステレオタイプな見方として、世の中で成功している起業家を論じる際、「あの人は元々持っていたものがすごかった」というストーリーを好む傾向があると感じます。そんなストーリーを聞くと、自分と対比する中でちょっと気持ちが楽になる。そんなところも含めて人間にはグロースマインドセットとフィックストマインドセットの両方があると思います。でも、稀代の起業家たちは今もなおまだ成長していますし、彼らは自ら興した事業を通じて成長をしてきたのだとも思います。
私は、神山まるごと高専という起業家を育成する学校を作りました。それはつまり、起業家は育成できると信じているということです。生まれ持った才能ではなく、成長する中で誰でも起業できるはずだという思いがあるからこそやっていることです。
翻って、Sansanにおいて「グロースマインドセット」を2024年のテーマとして掲げることの意味とは何か。書籍( 『マインドセット「やればできる! 」の研究』)を読んで、「Sansanっぽい」と言ってくれた人もいますが、Sansanはもともとグロースマインドセットを内包している組織だと感じます。そもそも私たちは、創業の段階から「世界を変えよう」と言っていました。グロースマインドセットを強く持った創業期だったと振り返って思います。つまり、「世界を変える」という、自分の成長を軽く超えたところを目指している。そのくらい突き抜けた信念に基づいてSansanは始まったわけです。
そんな経緯もあり、Sansanで培われてきたグロースマインドセットは、私をはじめとする経営陣や、リーダーたちのグロースマインドセットに依拠してきたという側面もあると感じています。これから生み出したいのは、そういう誰か個人のリーダーシップに基づいたグロースマインドセットだけではなく、それに重ねて、社員一人ひとりのグロースマインドセットに起因するそれぞれの成長や、その先に組織でなせることの大きな可能性。そんなことを信じて高みに向かっていける組織カルチャーを作り得たら、Sansanはより進化できるんじゃないかと思います。
Sansanは2007年に創業し、ずいぶん長くやってきました。
これまでを振り返ると、3つのフェーズに分けて話すことができます。
一つめが2007年から2012年の「創業期」。二つめが2013年から2019年の「成長期」。そして2019年からその先を「革新期」と呼んでいます。
2019年の革新期には「ここから新しいフェーズが始まる」と言っていました。確かに、その年上場もしましたし、マルチプロダクト化も果たしました。コロナ禍が収束し、やっと社会が元に戻って2023年を終え、そこでフェーズが一旦また区切られた感触があります。2024年から始まるSansanの第4フェーズが数年先に何と呼ばれるのかは正直まだわかりません。その元年となる今年、グロースマインドセットを掲げたい。そう強く思いました。
もう一段抽象化すると、今Sansanは、Pで括ることのできる企業を支える3つの柱の進化に向き合っています。
一つめはパーパス(Purpose)。MVV(Mission / Vision / Values)も含まれる、会社の在り様や成したいことを抽象化して社会に対してどういう存在であるということを表現したもので、Sansanでいうところの「カタチ」です。一方で、Sansanがこの先100年・200年と続くのであれば社会に対してどういう存在でありたいか、あるべきか。ミッション、ビジョンより一段抽象度の高い目的・役割としてパーパスが必要なんじゃないか。そう考え、パーパス策定に向けた全社議論を始めます。
パーパスだけでは会社は成り立ちません。もう一つの柱としてプロダクト(Product)があります。プロダクトとは、顧客が感じられるバリューそのもの。それは例えば「名刺管理から、収益を最大化する」という営業DXサービス「Sansan」の新しいタグラインにも表現されています。私自身、CPOを兼務して、今までより深くプロダクトに向き合っています。
最後の柱がピープル(People)。「グロースマインドセット」は人に向き合う話です。いかに個人が、組織が、そしてSansan全体で、それぞれのグロースマインドセット抱いて高みに辿り着くかが重要です。
パーパス、プロダクト、ピープル。この3つの柱、3つのPが相互に刺激しあいながら前に進んで行くのが会社というもの。今Sansanは、このパーパス、プロダクト、ピープル の3つの進化に、偶然にも同時に向き合っています。
ピープルについてはグロースマインドセットを掲げ、パーパスについては全社での議論を本格的に始める。プロダクトについては、組織としてプロダクトを生み出す再現性を高めていく。CPOとしてこれにコミットしていきます。
ただ、会社にとって一番大事なのはピープルです。ですので、新しいフェーズの元年に、「グロースマインドセット」をテーマに掲げて、ここからまた新たにカルチャーを作っていく。もともとあったカルチャーを表層化して、一人ひとりが言葉に出来るようにしていこうと思っています。
2・3年経った時には会社のカルチャーが大きく進化しているんじゃないかと思います。そして、そのうねりがパーパス議論やプロダクトの進化を次世代に向けて後押ししていくことになるんじゃないか。そう思い、今年のテーマにグロースマインドセットを掲げました。
2024年 1月
寺田親弘
※年始会議にて行われた寺田の全社スピーチを、一部修正の上、掲載。