当社グループでは、気候変動問題に関して、適切な体制の下で事業上のリスクや機会を把握、監督し、課題への対応力を高めていくことは、安定的な経済発展や生活の基盤確保等を目指して脱炭素社会への移行を進める上で、極めて重要な取り組みであると捉えています。このような考え方の下、当社は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が公表する提言に賛同を表明しており、当該枠組みに基づく開示を以下の通り、行っています。
当社グループでは、サステナビリティの実現に資する各種方針や重要事項等については、取締役会で審議し、決定しています。気候変動問題への対応は、当社グループが優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の1つに特定し、責任者である代表取締役の監督の下、IR・サステナビリティ推進部及び財務経理部にて検討しています。気候変動に係る各種指標や事業上のリスク、機会といった事項は、取締役会が毎年報告を受け、監督しており、事業戦略や計画は、当該重要事項を考慮した上で決定しています。
当社グループでは、気候変動がもたらす事業環境変化への対応力や適応力を強化するべく、主には、IPCCの共有社会経済経路・代表的濃度経路といったシナリオを利用し、気温上昇を1.5℃(SSP1-1.9)や2℃未満(SSP1-2.6)に抑えた事業環境のほか、4℃上昇(SSP5-8.5)が生じた事業環境を分析しています。その上で特定した事業上のリスク、機会及び対応策は下表の通りです。
なお、分析の対象期間として、現在から2025年中までを短期、2030年までを中期、2050年までを長期として設定し、当社グループの全事業を対象範囲としています。また、利益影響度は、年間10億円未満の場合を小、10億円以上30億円未満の場合を中、30億円以上の場合を大として表示しています。
種類 | シナリオ 分析 |
リスクの内容 | 発現時期 | 利益 影響度 (年間) |
対応策 | |||
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移行リスク | 市場 | 紙資源からのデジタル移行 | 1.5℃/2℃未満 | 社会全体で環境保護意識が高まり、紙資源を使用した各種ビジネスツールの利用が漸次的に減少し、デジタル情報やツールの利用が拡大する | 紙の名刺や請求書、契約書等をデータ化し、生産性の向上を実現する当社サービスの一部機能の活用頻度や重要性が低下する | 中期 | 小 | デジタル情報の活用を主軸とした利便性の高い機能を拡充し、プラットフォームとしての価値を向上させることで、アナログ情報のデータ化による価値と同等以上の付加価値を提供する |
4℃ | 紙資源からのデジタル移行は緩やかだが、災害やパンデミック等への対応として、デジタル情報やツールへのニーズは維持される | 小 | ||||||
クリーンエネルギーの利用 | 1.5℃/2℃未満 | クリーンエネルギーの利用に対する社会要請や需要が拡大し、各種エネルギー価格が高騰するほか、温暖化によって情報通信設備の冷却負荷が増加する | SaaS型のビジネスモデルを中心に事業展開する当社にとって必要不可欠なサーバー価格や電力等の各種エネルギー価格が上昇し、営業費用が増加する | 中・長期 | 小~中 | サーバーや電力をはじめとした必要資源・資材の調達先を適正化することでコスト削減に努めるほか、省エネの実施によって効率を向上させ、エネルギー使用量を削減する | ||
4℃ | クリーンエネルギー移行が進まないため、発電コストは比較的低位で推移するが、猛暑による冷房需要で一部のコストが上昇する | 小 | ||||||
法規制 | 炭素税率の上昇 | 1.5℃/2℃未満 | 多くの国や地域においてGHG排出量に対する各種規制が強化されるほか、カーボンプライシングとして新たに炭素税や高い税率が導入される | 税金負担額をはじめ、カーボンオフセットのための非化石証書やクレジットの購入費用が増加する | 中・長期 | 小 | 再生可能エネルギーの利用拡大や、省エネの実施によるエネルギー効率の向上等によって、税金負担額やカーボンオフセットに係る費用を削減する | |
4℃ | GHG排出量に対する制度的対応や社会受容が十分に進展せず、カーボンプライシングとしての炭素税や税率は緩やかな上昇に留まる | 小 | ||||||
物理的リスク | 急性 | 自然災害の増加 | 1.5℃/2℃未満 | 自然災害の発生が緩やかに増加する | 利用するサーバーや、紙の請求書等のデータ化を担う拠点が浸水し、サービス提供が停止するほか、当社が保管するサービス利用企業の書類の汚損が発生し、サービス価値が低下する | 中・長期 | 小~中 | 事業継続計画(BCP)の一環として、複数サーバーの利用によるシステムの冗長化、サービス運営上の重要拠点の分散化や緊急時用のマニュアル整備等を行うことで、自然災害時におけるサービスの継続性を確保する |
4℃ | 大きな被害につながる集中豪雨や洪水といった自然災害が激甚化かつ頻発化する | 小~大 |
種類 | シナリオ 分析 |
機会の内容 | 発現時期 | 利益 影響度 (年間) |
対応策 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
製品/サービス | 紙資源からのデジタル移行 | 1.5℃/2℃未満 | 社会全体で環境保護意識が高まり、紙資源の使用を抑制するサービスへの需要が拡大するほか、業務効率化を目的としたデジタル情報やツールの導入ニーズが急速に拡大する | デジタル情報の活用によってさまざまな業務フローの効率化を実現しながら、紙の利用抑制にもつながる機能を備えた当社の各種DXサービスに対する需要が拡大する | 中・長期 | 小~中 | デジタル情報の活用を主軸とした利便性の高い機能を拡充し、ユーザーへの提供価値を向上させるほか、営業やマーケティング活動を強化し、さらなる需要を喚起する |
4℃ | 社会全体の環境保護意識が限定的な水準に留まり、企業の行動も業務効率化を目的とした範囲に限られる中で、デジタル情報やツールに対するニーズの拡大は緩やかに推移する | 小 |
当社グループでは、各領域の管掌取締役とIR・サステナビリティ推進部及び財務経理部との協議の下でシナリオ分析を行い、気候変動に関する事業上のリスクと機会を特定し、重要性の評価や利益影響度の算出、対応策の検討を行っています。当該事項は年次で取締役会に報告され、取締役会はこれらリスクや対応策といった重要事項を考慮した上で、事業戦略や計画を決定しています。また、気候変動に関する重要なリスクは、内部監査等で実施する全社的なリスク分析の結果と統合し、管理しています。
当社グループでは、気候変動に関する評価指標としてGHG排出量を選定しており、直近3か年における実績は下表の通りです。
また、スコープ1及びスコープ2の削減目標として、2030年までのカーボンニュートラルの実現を掲げており、目標の達成に向けて各種取り組みに着手していくとともに、スコープ3の削減目標の設定についても、さまざまな内部・外部要因等を踏まえて、総合的な検討を進めています。
項目 | 単位 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
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スコープ1 | t-CO2 | 0 | 233 | 243 | 197 |
スコープ2 (ロケーション基準) |
t-CO2 | 639 | 607 | 752 | 597 |
スコープ2 (マーケット基準) |
t-CO2 | 668 | 618 | 702 | 377 |
スコープ1+2 (マーケット基準) |
t-CO2 | 668 | 851 | 945 | 575 |
スコープ3 | t-CO2 | 15,679 | 18,638 | 21,509 | 43,774 |
スコープ1+2+3 (マーケット基準) |
t-CO2 | 16,347 | 19,489 | 22,454 | 44,349 |
スコープ1+2+3 GHG排出量原単位 (売上高当たり) |
t-CO2/億円 | 81.7 | 78.2 | 69.0 | 107.5 |
※ Sansan株式会社単体の実績を集計しており、2025年5月期時点で当社グループの事業範囲の95.5%(連結売上高に占める単体売上高の割合)をカバーしています。
※ スコープ1は、当社が所有するオフィスや設備において直接排出されたGHG排出量を集計しています。スコープ2は、各オフィスにて購入した電力や熱エネルギー等の使用を通じて間接的に排出されたGHG排出量を集計しています。スコープ3は、スコープ1及びスコープ2以外のバリューチェーン全体(カテゴリ1から15まで)におけるGHG排出量を集計しています。算出方法や対象とする範囲の精緻化 に伴い、過去数値を更新しています。