気候変動対応

TCFD提言に基づく開示

当社グループでは、気候変動問題に関して、適切な体制の下で事業上のリスクや機会を把握・監督し、課題への対応力を高めていくことは、安定的な経済発展や生活の基盤確保等を目指して、低炭素経済、ひいては脱炭素社会への移行を進める上で極めて重要な取り組みであると捉えています。このような考え方の下、当社は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が公表する提言に賛同を表明しており、当該枠組みに基づく開示を以下の通り行っています。

1 ガバナンス

当社グループでは、気候変動問題への対応を含めた、サステナビリティの実現に資する各種方針や重要事項等については、取締役会で審議し、決定しています。気候変動に関する課題への対応は、代表取締役の監督の下、IR室やオフィス戦略部、財務経理部等のコーポレート部門で構成される気候変動対応プロジェクトを設置し、検討しています。当該プロジェクトにおいて、検討、集計及び特定等がなされた気候変動に係る各種指標や事業上のリスク、機会といった事項は、取締役会が毎年報告を受け、監督しており、事業戦略や計画は、当該重要事項を考慮した上で決定しています。

2 戦略

当社グループでは、気候変動がもたらす事業環境変化への対応力や適応力を強化するべく、主には、IPCCの共有社会経済経路・代表的濃度経路といったシナリオを利用し、気温上昇を1.5℃(SSP1-1.9)や2℃未満(SSP1-2.6)に抑えた事業環境のほか、4℃上昇(SSP5-8.5)が生じた事業環境を分析しています。その上で特定した事業上のリスク、機会及び対応策は下表の通りです。
なお、分析の対象期間として、現在から2025年までを短期、2030年までを中期、2050年までを長期として設定し、当社グループの全事業を対象範囲としています。また、利益影響度は、年間10億円未満の場合を小、10億円以上30億円未満の場合を中、30億円以上の場合を大として表示しています。

(1)リスクの特定
種類 物理的リスク
急性
シナリオ分析 大きな被害につながる集中豪雨や洪水といった自然災害が激甚化かつ頻発化する
リスクの内容 利用するサーバーや、紙の請求書等のデジタル化を担う拠点が浸水し、サービス提供が停止するほか、当社が保管するサービス利用企業の書類の汚損が発生し、サービス価値が低下する
発現時期 中・長期
利益影響度
(年間)
1.5℃/2℃
未満
シナリオ
小~中
4℃
シナリオ
小~大
対応策 事業継続計画(BCP)の一環として、複数サーバーの利用によるシステムの冗長化、サービス運営上の重要拠点の分散化や緊急時用のマニュアル整備等を行うことで、自然災害時におけるサービスの継続性を確保する
種類 移行リスク
法規則 市場
シナリオ分析 多くの国や地域においてGHG排出量に対する各種規制が強化されるほか、カーボンプライシングとして新たに炭素税や高い税率が導入される クリーンエネルギーの利用に対する社会要請や需要が拡大し、各種エネルギー価格が高騰するほか、温暖化によって情報通信設備の冷却負荷が増加する 社会全体で環境保護意識が高まり、紙を利用した各種ビジネスツールの利用が漸次的に減少し、デジタル情報の利用が拡大する
リスクの内容 税金負担額をはじめ、カーボンオフセットのための非化石証書やクレジットの購入費用が増加する SaaS型のビジネスモデルを中心に事業展開する当社にとって必要不可欠なサーバー価格や電力等の各種エネルギー価格が上昇し、営業費用が増加する 紙の名刺や請求書、契約書等をデジタル化し、生産性の向上を実現する当社サービスの一部機能の活用頻度や重要性が低下する
発現時期 中・長期 中・長期 短・中期
利益影響度
(年間)
1.5℃/2℃
未満
シナリオ
小~中
4℃
シナリオ
対応策 再生可能エネルギーの利用拡大や、省エネの実施によるエネルギー効率の向上等によって、税金負担額やカーボンオフセットに係る費用を削減する サーバーや電力をはじめとした必要資源・資材の調達先を適正化することでコスト削減に努めるほか、省エネの実施によって効率を向上させ、エネルギー使用量を削減する デジタル情報の活用を主軸とした利便性の高い機能を拡充し、プラットフォームとしての価値を向上させることで、アナログ情報のデジタル化による価値と同等以上の付加価値を提供する
(2)機会の特定
種類 製品/サービス
シナリオ分析 社会全体で環境保護意識が高まり、紙の利用抑制につながるサービスへの需要が拡大するほか、気温上昇に伴う感染症リスクの高まりによって、非対面・非接触型の事業活動が増加し、デジタル情報活用の重要性が高まる
機会の内容 利用するサーバーや、紙の請求書等のデジタデジタル情報の活用によってさまざまな業務フローの効率化を実現しながら、紙の利用抑制にもつながる機能を備えた当社の各種DXサービスに対する需要が拡大するル化を担う拠点が浸水し、サービス提供が停止するほか、当社が保管するサービス利用企業の書類の汚損が発生し、サービス価値が低下する
発現時期 中・長期
利益影響度
(年間)
1.5℃/2℃
未満
シナリオ
小~中
4℃
シナリオ
対応策 デジタル情報の活用を主軸とした利便性の高い機能を拡充し、ユーザーへの提供価値を向上させるほか、営業やマーケティング活動を強化し、さらなる需要を喚起する

3 リスク管理

当社グループでは、各領域の管掌取締役と気候変動対応プロジェクトとの協議の下でシナリオ分析を行い、気候変動に関する事業上のリスクと機会を特定し、重要性の評価や財務影響の算出、対応策の検討を行っています。
当該事項は年次で取締役会に報告され、取締役会は、これらリスクや対応策といった重要事項を考慮した上で、事業戦略や計画を決定しています。また、気候変動に関する重要なリスクは、内部監査等で実施する全社的なリスク分析の結果と統合し、管理しています。

4 指標と目標

当社グループでは、気候変動に関する評価指標としてGHG排出量を選定しています。
直近2か年におけるGHG排出量の実績は下表の通りです。なお、スコープ3におけるGHG排出量実績の算出は現在検討を進めています。

項目 単位 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期
スコープ1 t-CO2 0 0 0
スコープ2
(ロケーション基準)
t-CO2 477 639 840
スコープ2
(マーケット基準)
t-CO2 525 668 851
スコープ1+2
(マーケット基準)
t-CO2 525 668 851
スコープ3 t-CO2 - 15,679 18,638
スコープ1+2+3
(マーケット基準)
t-CO2 - 16,347 19,489
スコープ1+2+3 GHG排出量原単位
(売上高当たり)
t-CO2/億円 - 81.7 78.2

※ Sansan株式会社単体の実績を集計しており、2023年5月期時点で当社グループの事業範囲の97.7%(連結売上高に占める単体売上高の割合)をカバーしています。

※ スコープ1は、当社が所有するオフィスや設備において直接排出されたGHG排出量を集計しています。スコープ2は、各オフィスにて購入した電力や熱エネルギー等の使用を通じて間接的に排出されたGHG排出量を集計しています。スコープ3は、スコープ1及びスコープ2以外のバリューチェーン全体(カテゴリ1から15まで)におけるGHG排出量を集計しています。

※ 集計方法の精緻化に伴い、2022年5月期以前の実績を再計算しています。