当社グループが持続的な事業成長や新しい価値創出を実現していく上で、人材は最も重要な経営資本の1つであり、これまで新しい市場を創造しながら高い成長を遂げることができたのは、多様なバックグラウンドを持つ優秀な人材の活躍によるものと捉えています。このような考え方の下、当社グループが優先的に取り組むべき重要課題の1つとして「人材の採用・育成・活躍推進」を特定しています。
当社グループでは、事業成長に資する高い専門性をもつ多様な人材の採用を積極的に行う中において、ミッションやビジョンに共感する、ミッションドリブンな姿勢を持つ人材を重視しています。急速な人員拡大が進む中で、当社グループが大切にしてきたカルチャーが薄れないよう、人的資本の土台となる企業カルチャーの醸成に注力し、共通のミッションや目標に向かって挑戦し続けられる風土を築いています。さらに、入社後も社員1人ひとりがもつ知見やアイデアを最大限に活かせるよう、研修やキャリア支援制度を整備し、成長を支援する環境づくりに力を入れています。
これらの方針の下、多様な人材が活躍できる機会の創出や環境の整備を推進し、ビジネスの課題解決に貢献するイノベーションの創造に取り組んでいきます。
重要な成長戦略の一環として継続的に人材採用を強化しており、開発や営業、バックオフィス等のさまざまな組織は、多様なバックボーンをもった優秀な人材で構成されています。採用においては、高い専門性やスキルを保有しているだけではなく、当社グループの企業理念に共感するミッションドリブンな姿勢のある人材を重視しています。これは、ミッションやビジョン、バリューズといった企業理念と、自らのありたい姿が合致する人材ほど、入社後に活躍できる可能性が高いと考えているためであり、これまで、ミッションドリブンな企業風土を構築してきたことが採用活動に効果的に機能し、多くの優秀かつ多様な人材の採用を実現しています。
また、リファラル採用の強化に注力しており、2030年5月期における目標として、リファラル採用比率35%を目指しています。リファラル採用を通じた採用決定率は、通常の選考に比べて大幅に高く、当社グループの重要な成長戦略である人材の採用に大きく貢献しており、社員自らが「一緒に働きたい」と思う人材に対してアプローチするため、採用後のミスマッチが少なく、早期退職率が低い傾向にあります。さらに、リファラル採用は、社員が自分の大切な友人や知人に対して当社グループを入社先として紹介するほど、当社グループに良い印象をもっていることの表れでもあるため、リファラル採用率は組織状態を定量的に測定する1つの指標としても重視しています。
採用紹介時の会食費用を会社が負担することや、採用が決定した場合には謝礼金を支給することで、社員が積極的に紹介しやすい環境を整えています。
オフィス各フロアに設置されたデジタルサイネージや社内向け動画コンテンツを通じて、「マイミャク」制度の認知度を高め、社員がリファラル採用に積極的に関わることを促進しています。
毎月、採用候補者と社員が交流できるイベント「Sansan Bar」を開催しています。このイベントには毎回50人以上が参加しており、社員のネットワークを活かして優秀な人材を紹介・採用する体制を強化しています。
2023年6月にさらなる事業成長を見据えた大規模な組織改変を実施しました。従来は各サービスの営業部門を一元管理していましたが、サービス毎に独立した営業組織をもつ事業部体制へと移行し、リソースの「最適化」から、売上高の「最大化」を図る方針へと転換しました。この新たな方針に伴い、人材の採用・確保を経営上の最重要課題として位置付けました。
大規模な採用の推進に向け、当社グループは現場の採用力強化のため、各事業部内にHRBP組織を設立しました。HRBPは、各事業部の戦略に基づく特有のニーズを深く把握し、最適な採用計画や人材育成、評価等を人事本部と連携しながら実施しています。HRBP組織の設立により、各事業の特性に合わせた柔軟な人材戦略を展開できるようになり、事業毎に最適な人材の採用を可能にしています。
採用活動の効率を高めるために、人事本部の配下に部門横断の業務企画組織を設立しました。この組織において、採用オペレーション全体を統合し、部門毎の最適化と効率性の向上を同時に実現しています。
当社グループは、採用を強化する目的で、全職種・全事業部共通して採用ブランドの形成と情報発信の強化に努めており、優秀な人材の引き付けと採用活動の効果向上を目指しています。
急拡大する組織において生産性を維持し、さらに向上させるためには、1人ひとりの成長を加速させることが重要だと考えており、採用後の育成と活躍推進に積極的に取り組んでいます。
人事制度として「ミッショングレード制度」を採用し、業務上の権限や責任、処遇等を等級によって定めています。この等級は、これまでの実績だけではなく、今後の期待値に応じて決定することで、個人の成長にレバレッジをかけています。
人事評価では、四半期毎に組織で設定するOKR(Objectives and Key Results)に基づき、個人の組織への貢献度を評価しています。また、360度評価を取り入れることで、直属の上長だけでなく、業務上関わりのある同僚や他部門の関係者からのフィードバックも総合的に反映しています。これにより、社員の成長促進と組織全体のパフォーマンス向上につなげています。
過去3年間、社員エンゲージメントのサーベイを継続的に実施しており、2024年5月期には過去最高水準のスコアを記録しました。エンゲージメントスコアは業績と強い相関を示しており、2024年5月期の売上高成長の再加速が全社に波及し、高い組織エンゲージメントにつながったと分析しています。また、自社を他人に薦められるかを示すeNPS*1 でも、日系企業の平均がマイナス40からマイナス50と言われる中で、プラスマイナス0近辺に改善しました。エンゲージメント向上を目的に、個人、周囲、組織の3つの側面に焦点を当てた、以下の取り組みを実施しており、今後も組織全体のパフォーマンス向上と事業成長に貢献していきます。
<個人に対する施策>
社員が新しい業務経験に挑戦し、成長できるように、社内異動を可能とする制度です。
専門知識を深めるために書籍購入や社内勉強会をサポートし、技術的成長を促進します。
育児と仕事の両立を支援する制度で、仕事と家庭のバランスを取りやすい環境を整備しています。
コーチングやキャリア相談を通じて、個々の成長を支援しています。
低用量ピルの処方と、処方に当たって必要なオンライン診療にかかる費用を、会社が補助しています。
月に1回、正社員や 契約社員に対してエンゲージメントサーベイを実施し、回答の分析結果をセルフマネジメントや組織マネジメント、全社的な社内制度・施策の立案等に活かしています。
<周囲に対する施策>
キャリアサマリや性格診断を基に、社員同士が自分の強みを共有し、チームワークを促進します。
社員同士が互いに称賛し合う制度を活用し、組織全体のモチベーションを高めています。
社員同士のコミュニケーションを促進する飲み会補助制度です。
グループコーチングを実施し、チームの目標達成とメンバー間の協力を促進します。
バリューズを体現し、成果を上げた社員を表彰する制度です。
<組織に対する施策>
社員の生産性や創造性を最大化することを目的に、対面でのコミュニケーションを中心としながらリモートワークを組み合わせるオフィスセントリックな働き方を実践しています。
社員のネットワークを活用し、企業カルチャーに適した優秀な人材を採用しています。
当社グループのミッション・ビジョンに共感し、それを体現できる人材を採用することに重点を置いています。
全社員が参加し、企業理念を共有・議論する機会を設け、理念の浸透を図っています。
未来のリーダー育成を目的とした長期インターンシップ制度を提供しています。
当社グループは、2023年に開校した私立高等専門学校「神山まるごと高専」の支援をしています。社会を切り拓く「モノをつくる力で、コトを起こす人」の育成を掲げる同校が未来のイノベーターを創出していくことを支援することで、当社グループのミッションである「出会いからイノベーションを生み出す」の実現や、これからの世の中を変えていくIT人材の育成支援につなげていきたいと考えています。
具体的には、当社グループはスカラーシップパートナー*2 の一社として参画しており、複数の学生をSansan奨学生として支援しています。当社グループから、営業や事業企画、デザイナー、エンジニア等、多様な職種の若手社員がメンターとして参加し、学生たちに年間を通じたサポートプログラムを提供しています。プログラムの内容は学年によって異なり、学校が設定した課題を基に活動方針を策定し、支援を行います。
現在、神山まるごと高専には2年生までが在籍しており、1年生には「企業の魅力を紹介するプレゼンテーション」、2年生には「強みを活かした将来の事業を考案する」という課題が与えられており、プレゼンテーションやデザインといったノウハウのみならず、企業の仕組みや必要な機能、サービスの成り立ち等、メンターたちがそれぞれの知識や経験を提供しています。これら支援は、同時にメンターとして参加する社員自身の成長促進にもつながっており、将来的には、管理職候補として活躍することが期待される等、当社グループの人材育成にも寄与しています。
TOPGUNは、総合職の新卒社員を対象とした成果型研修プログラムで、実際の事業課題に取り組むことで、早期に実力を発揮できる人材を育成します。基礎的な研修を終えた後、新卒社員はグループに分かれ、現実のビジネス課題に基づいたミッションを達成するため、目標達成に向けた戦略構築から、アポイントの獲得、商談、クロージング、カスタマーサポートまでの一連の業務を自ら実行します。このプログラムでは、現場で高い成果を出している社員がマネージャーとしてサポートし、ビジネスプロセスや企業カルチャーの理解を深めることを支援します。新卒社員は実践的な経験を通じて早期に成功体験を積み、自信を持って成長していくことを目指しています。
当社グループではミッション、ビジョン、バリューズを「Sansanのカタチ」と総称していますが、加えて、より短期の視点で向き合うべきテーマを毎年掲げています。2024年のテーマは「グロースマインドセット」です。組織拡大が続く中では、1人ひとりの成長が事業成長のドライバーとなり、会社全体の成長に直接的につながっていくものだと考えており、個人のグロースマインドセットとミッションをはじめとした企業理念が掛け合わさることで、当社グループの人的資本の土台ともなるカルチャーが醸成されていきます。そのため、入社時はもとより、さまざまな機会を通じて社員1人ひとりが企業カルチャーや毎年のテーマに向き合う場を設ける等、各種研修の実施を強化しています。
組織拡大に伴い、現在では全社員の半数程度が直近3年以内に入社したメンバーで構成されています。さまざまなバックグラウンドをもって入社した社員を最速で活躍できるようにするには、当社グループのミッション、ビジョン、バリューズといった企業理念や価値観と、1人ひとりのキャリアや成長をいかに早期に重ねていけるかが重要であると捉えています。そのため、入社初日から5日間通して行う「SCOP」の中で、2日間を企業理念や価値観の理解促進のための時間として活用しています。さらに、現場に配属後も入社から半年間は、月に1度SCOPの一環として、ミッション、ビジョン、バリューズについて自部門や他部門のマネジャーとの対話や役員との対話の機会を設け、より深く体得できるよう目指しています。
全社員が参加する全社会議は、企業理念や目標に向き合い、未来を語る重要な場として毎月2回開催されています。この会議では、セキュリティ意識の向上、バリューズの理解促進、ミッションやビジョンへの共感を深めること等を目的としています。四半期毎にCEOが、実績の振り返りや次四半期の方針を説明するほか、決算やサービスの最新状況、その年のテーマに関連した話題を経営陣や社員が共有する等、全社員が会社の状況や方針、企業カルチャーを等しく理解できる場を提供しています。
「Sansan Value Star(SVS)」表彰は、毎年のテーマやバリューズを最も体現した社員やチームを評価する制度で、半年に一度全社会議内で実施します。また、新卒の中で最も早く成果を上げた社員には新人賞を授与しています。表彰時には、上司や同僚がその受賞に至ったエピソードを紹介し、さらに後日、社内の広報媒体で詳細なストーリーを配信します。これにより、他の社員も課題に対して、どのように取り組んで成果を出したのかを学び、刺激を受ける機会を提供しています。
全社員参加型のカルチャープラットフォーム「Unipos」を活用し、企業文化の浸透や社員のエンゲージメント向上を図っています。「Unipos」は、社員が互いの貢献に対して称賛コメントとチップを送り合い、優れた行動を全社で可視化する仕組みです。ミッションやビジョン、バリューズ、さらにはその年のテーマに基づいた行動を投稿できるため、企業理念の浸透に大きく寄与しています。2024年5月期の投稿率は58.1%であり、2030年5月期までに80%の投稿率達成を目指しています。また、定期的に最も企業理念を体現した行動を表彰し、社内で広報することでさらなる利用促進を図っています。