2018.07.03

【レポート】パリで開催された国際学会「NetSci 2018」に参加しました

お久しぶりです! DSOC R&Dグループの西田貴紀です!

どうして私がDSOCに?!」という連載記事を書かせていただいてから早1年が経ちました。連載の最後に、研究成果を報告できるように精進すると約束しましたが、ついにその約束を果たす時が来ました!

6月11日〜6月15日にフランス・パリで開催されたネットワーク分析の国際学会である「NetSci 2018」にてポスター発表をしてきました。今回は、その様子をレポートさせていただきます!

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NetSciとは?

NetSci 2018とは、Network Science Societyが主催する、ネットワーク分析に関する研究者たちが集う国際学会です。

Network Science Societyのメンバーには、「弱い紐帯の強さ(弱いつながりの強さ)」で有名なMark Granovetterをはじめ、スモール・ワールド・ネットワークの研究で有名なDuncan J. WattsやSteven H. Strogatzといったトップ研究者の方々が在籍しています。

本学会の参加人数は、例年500〜600名程度でしたが、今年の開催地がパリだったこともあってか、なんと過去最高の791名が参加し、この分野では最大の国際学会となり、大いに盛り上がりました。

今回、「Sansan Data Discovery」という共同研究プラットフォームにて、予防医学博士の石川善樹さんが率いる私たちの研究チームが取り組んでいる転職に関する研究が、こちらの学会にポスター発表としてアクセプトされましたので、NetSci 2018に参加してきました。

「弱いつながり」は転職に有効なのか?

まずは、簡単に私たちの研究について紹介します。

1973年に社会学者であるMark Granovetterが提唱した「弱い紐帯の強さ(弱いつながりの強さ)」という転職にまつわる理論があります。この理論は、友人や家族といった密にコミュニケーションを取り合う「強いつながり(紐帯)」よりも、知人やたまにしか会わないような人との「弱いつながり(紐帯)」が転職する際には重要であるというものです。

そのメカニズムは、「弱いつながり」に当たる人は自分がいつも交流するコミュニティーと異なるコミュニティーに所属している可能性が高いため、そのつながりを通して入手できる目新しく有益な情報が転職に有効になるケースが多いというものです。

つまり、「弱いつながり」というよりも「コミュニティーを橋渡しするようなつながり」から有益な情報が入りやすいということが、Mark Granovetterの理論の本質なのです。

Mark Granovetterが提唱してから、さまざまな実証研究が世界中で取り組まれてきました。その結果は必ずしも理論通りとはならず、「強いつながり」の方が転職には影響を与えているといった研究結果もあるのが現状です。

私たちは、この理論をEightで捉えられるビジネスネットワークのデータを利用して実証しました(分析に当たっては、ある一定期間においてEightを利用していたユーザーについて、プロフィールデータに含まれた一部の情報と名刺交換履歴を匿名化し、Eightの利用規約で許諾を得ている範囲で使用しています)。

その結果、理論とは異なり、コミュニティー内に閉じるような「強いつながり」を持つ人の方が転職する傾向にあることが分かりました。

最近の研究結果では、私たちと同様に情報の更新頻度が高いようなケースでは「強いつながり」の方が有益な情報を得やすいことが示されていたり、LinkedInのデータを用いた研究では「弱いつながり」は職業紹介のみに有効であり、「強いつながり」は内定の受諾までに有益であることを示していたりしています。

私たちは、これらを踏まえ、今日の情報が溢れており整理することが難しいような時代においては「強いつながり」から得られる転職によるミスマッチをなくすような情報の方が重要になっているのではないかという解釈をしています。

具体的にどのように情報の質が異なるのかなど、まだまだ明らかにできていないことも多いのですが、今回のポスター発表では多くの人と議論することで、今後の研究を進める上でのヒントを得ることができました。

私自身、初めての国際学会かつポスター発表でしたが、海外の方とのディスカッションはこれまでしてきたものとは異なり、意見をほとんど否定せずに建設的にコメントし合う印象を受けました。

そういった雰囲気もあってなのか、次に試してみたい分析案や研究テーマが浮かびやすく、知的好奇心が刺激される最高に楽しい時間となりました!

研究の詳細を知りたい方は、こちらで展示したポスターと研究紹介動画をチェックすることができます。

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1番面白かった研究をご紹介!「出会う前に親友と分かるのか?」

今回の学会では、面白い研究発表がたくさんされていました! 日本に帰ってきてからも論文を整理しながら、論文をいくつか読んでいますが、まだまだ終わりが見えません(笑)!

その中でも特に印象に残ったMITメディアラボのEsteban Moro客員教授の研究を紹介したいと思います。

彼らの研究チームには、中長期的な経済発展を実によく予測するという「経済複雑性指標」を開発しているMITメディアラボのCesar Hidalgo准教授の名前もあり、発表の前から気になっていました。

彼らの研究発表は、”How did you meet your best friend?”と題され、前述したいわゆる「強いつながり」は誰かと出会う前に分かるのかという問いを検証したものでした。ネットワーク分析では「リンク予測」という「誰と誰がネットワーク上でつながるのか?」という、この分野では典型的な問題があります。彼らはその問いになぞらえて「誰と誰が強いつながりで結ばれるのか?」という問いを設定して、通話履歴のデータを使用して分析をしていました。

彼らは、性別や年齢といったデモグラフィックな変数、同じコミュニティーに所属しているかなどのネットワークの構造に関する変数、そして地理的距離を変数として「誰と誰がつながるのか?」というリンク予測タスクと「誰と誰が強いつながりで結ばれるのか?」という2つのタスクに取り組みました。具体的には、つながりができるまでの100日間のデータを用いて、つながりができてから50日間で計測される通話回数をつながりの強さの尺度としています。

その結果、「誰と誰がつながるのか?」というタスクは約90%の正解率だったのに対して、「誰と誰が強いつながりで結ばれるのか?」という約60%の正解率しか得られませんでした。つまり、ネットワークから将来どういったつながりになりうるのかは、十分に予測できないということになります。

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この結果を解釈するならば、出会ってからのコミュニケーションがその後の関係性を決めている可能性が高いようです。SNSなどでは、つながるべき人がレコメンドされる時代であり、出会う前に出会うべき人が分かる可能性もありますが、どのように出会うのか、どのように関係を構築していくのか、というのことも重要であると解釈できる結果が印象的でした。

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パリは何もかもが最高だった!

これまでパリを訪れたことはなく、ファッション好きな私にとっては憧れの都市でもあったので、学会が終わった夕方から街に出かけて少しだけ観光も楽しんできました! 特に食とファッションについて、印象的だったものを紹介したいと思います。

まず食ですが、RESTAURANT A.Tでのディナーを紹介したいと思います。日本人の田中淳シェフのレストランで、「色彩」を生かして食材だけでなく食器も合わせて完成される、色鮮やかでアート作品のような料理をいただきました。次から次へと色鮮やかな料理が出てきて、おいしいのはもちろんのこと、まるでファッションショーを見ているような気分になり最高でした! 特に印象的だったのは、檜のアイスです。黒のモードな服が好きな自分にとっては、無彩色のアイスの見た目と檜の香りにもモードを感じたので、今回の出張で食べた中で一番お気に入りの料理となりました。

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続いて、ファッションです。こちらは、運良くマルタン・マルジェラの回顧展が行われており、じっくりと見てきました。

マルタン・マルジェラはベルギー出身のデザイナーで、アントワープ・シックスと呼ばれるベルギーの有名デザイナー陣と同時期に注目を浴びたデザイナーです。こちらのブランドは、私の大好きなコムデギャルソンに影響を受けており、足袋ブーツ、エイズTシャツ、ペンキをデザインに取り込んだアイテムなどが有名です。今回は1989年から2009年までのコレクションが展示されており、足袋ブーツなど有名なアイテムが展示されていて、感動してテンションが上がりました! この回顧展に完全に影響され、翌日の学会終了後にはラファイエットというデパートに直行し、大学1年生の時からずっと欲しかった足袋ブーツを購入してしまいました。マルジェラについてもっと語りたいところですが、収集がつかず、ファッションレポートになってしまうため、この辺りで自重します(笑)。

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食とファッションだけではなく、パリに到着した瞬間からその街並みの雰囲気に魅了され、パリにいるだけで最高な気分になりました。

加速するSansan Data Discovery

NetSci 2018は、これまでに参加した学会の中で最も知的好奇心を刺激され、これから業務で活用できる分析手法や知識を獲得できましたので、最高の出張となりました。世界中には優秀な研究者がたくさんいて、自分も負けていられないという気持ちになりましたし、そういった研究者の方々とコラボレーションできるようにSansan Data Discoveryも推進していこうと強く心に誓いました。

この勢いのまま、7月12日からは米国・シカゴで開催されるIC2S2(2018: 4th Annual International Conference on Computational Social Science)という国際学会にもブロンズスポンサーとして協賛し、同様にポスター発表もしてきます!

次回の国際学会レポートもお楽しみに!

執筆者プロフィール

text: DSOC R&Dグループ 西田貴紀