今回は、Sansan株式会社でプロダクトのUI/UXをデザインする上原茂実と、コーポレート全体のブランディングを担う部門でデザインを担当する戸羽正晴、そして新卒のデザイナー職採用に携わる人事部新卒採用グループの石川陸人にインタビューを行いました。
デザイナーとして働くことの面白さや難しさ、役割の異なる「Sansanのデザイナー」に共通するデザインへの考え方とは。
また、人事とデザイナー両方の視点からSansanは今どんな新卒デザイナーを求めているか聞きました。
※本記事の取材は2022年1月に感染対策を徹底した上で実施しました。
プロフィール
上原 茂実(写真左)
Sansan Unit Product Designグループ アシスタントグループマネジャー
SIerでシステムエンジニアとしてキャリアをスタート。受託制作の事業がきっかけで、デザインやディレクションを学ぶ。その後、広告制作会社に転職。プロモーション領域のディレクションやデザインを経験し、2015年にSansanへ入社。営業DXサービス「Sansan」のモバイルアプリに関わるUI/UXデザインを担当。現在はアシスタントマネジャーとして、グループの成果やメンバーの育成にも向き合う。
戸羽 正晴(写真中央)
ブランドエクスペリエンス部 ブランドクリエイティブグループ
大学卒業後、広告代理店にてデザイナー・アートディレクターとして様々なクライアントワークを経験。その後、Web制作会社でデザイナー・Webディレクターを経て、2019年にSansanへ入社。現在はブランドエクスペリエンス部(以下、BX部)のデザイナーとしてグラフィック・Web・イベント・ノベルティ・広告など、プロダクト以外の多種多様なタッチポイントのデザイン・ディレクションを担当している。
石川 陸人(写真右)
人事部 新卒採用グループ
大学卒業後、大手ゲーム会社に入社し、約5年人事として採用・研修・労務・社内制度設計を担当。特に新卒採用には長く携わり、デザイナー採用もその時点から経験している。2021年にSansanへ入社し、デザイナー・エンジニア・研究開発職の新卒採用を担当。内定者のオンボーディングも一部担当している。
デザイナーとしてひとつのプロダクトにとことん向き合いたい
まずはじめに、みなさんのこれまでの経歴について教えてください。
上原:僕は、SIerでエンジニアとしてキャリアをスタートしました。受託制作も行う小さい会社だったので、コーディングだけでなく、デザインやディレクション、営業まで幅広く経験しましたね。その後はもう少し大きい仕事がしたいと思い、広告系の制作会社に転職してプロモーションなどに携わったのちに、2015年にSansan株式会社に入社しました。
戸羽:僕は宮城県にある大学でデザインを学んだ後、広告代理店に入社しました。そこでデザイナーやアートディレクターとして働き、その後転職したWeb制作会社でも、同じくデザインやディレクションを担当していました。
その後2019年にSansanに入社してから現在に至るまで、ずっとデザイン業務を中心に担当しているので、デザイナーとしてのキャリアは10年以上になりますね。
石川:僕は大学を卒業して5年間、大手ゲーム会社で人事業務を行ってました。なかでも新卒採用には一番長く関わっています。当時もCGデザイナー・グラフィックデザイナーの採用を行い、Sansan入社後はエンジニア・研究開発・デザイナー等、クリエイター職全般の新卒採用に携わっています。
デザイナーの二人は現在はどのような仕事を?
上原:営業DXサービス「Sansan」のモバイル版のUI/UXのデザインを担当しています。同時に、所属しているグループのマネジメント業務も行っています。戸羽:先日ローンチしたばかりの新しいサービス、契約DXサービス「Contract One」を担当していて、キービジュアルやサイトのデザイン、PRに使う資料のデザインフォーマットなんかも作っています。
BX部全体としては、各サイトのリニューアルやこれから行われるイベントの企画からLPの制作まで、多様なデザインをしています。
二人ともデザイナーとして多くの経験を積まれていますが、なぜSansanに転職したのでしょうか?
上原:広告制作会社に勤めていた際、いろいろなプロジェクトを担当する中で「ひとつのプロダクトにとことん向き合いたい」という気持ちが湧いてきたんです。その思いを転職の軸にしていたので、必然的に事業会社をいろいろと探していました。Sansanに興味を持ったきっかけは転職エージェントの方の熱量です(笑)。正直に言うと、当時はSansanに対して「名刺の会社でしょ?」というイメージしかなかったのですが、転職エージェントの担当者がものすごい情報量と熱意で「いい会社ですよ!」と迫ってくるので、そこまで言うなら面接くらい受けてみようかなという気持ちでした(笑)。
でも、代表の寺田と面接してそのイメージは一変しましたね。
率直に思っていることを聞いてみたんです。「名刺管理ってもう完成されてますよね?名刺以外で何か考えているんですか?」って。
すると寺田が「名刺の先には人がいて、会社がある。名刺の先にあるものをデータにして可視化することでできることはまだまだたくさんある」と。しかも当時はクラウドで名刺を管理するなんて誰もやっていなくて、競合と言われる会社がほとんどいない状態。
寺田から「前例のない仕事に挑戦することが楽しそうだと感じるなら、Sansanでの仕事はあなたに合ってる。そうじゃないならSansanは合わないと思う」という言葉を言われて、反射的に「おもしろそう、やってみたい」と思ったんですよね。
寺田に短い言葉で的確なビジョンを語られて、一気にイメージが変わりました。それでSansanへの入社を決めました。
戸羽:僕も上原さんと似ています。最初はSansanのことは全然知りませんでした。同じく転職エージェント経由で教えてもらったのですが、「なんだか堅そうな会社だな」というのが第一印象でしたね。これまで映画やゲームなどエンタメ系のビジュアルを制作することが多かったというのもあり、それと比べると「名刺」は真面目で堅い感じがしたんです。
ですが、寺田のインタビューを読み、自分で色々と調べていくうちに「この会社は名刺をデータ化したその先をつくってるんだ」とわかって、これはすごいぞと思いました。あとは、僕もいろいろな制作を経て、デザイナーとしてひとつのモノ・コトにじっくり向き合いたいと思っていたというのも入社を決めた理由ですね。
その思いはふたりに共通していますね。
上原:制作会社時代の仕事ってプロジェクトごとに全く違うことを求められて、多くは「世に出して終わり」となることが多いんですよ。戸羽:すごくわかる。終わった途端もう次が始まっていて、その先、また次と。終わったプロジェクトについて「すごく評判よかったよ」と言われることはあっても、その後に関わることはあまりないんです。それだと、大きなプロジェクトに関わっても作りっぱなしという感じがして、虚しさを感じてしまうこともありました。
経営陣とダイレクトに仕事ができる スピード感
では、Sansanのデザイナーの特徴にはどんなものがあるのでしょうか? おもしろいと感じることや難しいことは?
上原:各々がデザインやそれに至る考え方をしっかりと持っているのは特徴だと思います。共通する部分も勿論あれば、個々に大切にしている部分もある。そんな皆の強みが集まったり、時にはぶつかり合ってメンバーやチームが進化していくのが嬉しさでもあり、難しさですね。戸羽:あとは、制作会社にいたときはコミュニケーションを頻繁に取るのは担当者のみで、その上の意思決定をする人たちとはかなり距離感があったんですね。たとえ担当者が「このデザイン最高です!」と言ってくれても、翌日には「すみません、上からの指示で変更になりました」ということもしょっちゅう起きます。
それに比べてSansanでは、意思決定をする層と直接仕事ができます。間に何も挟んでいない分、ストレートでスピーディ、決定に対する納得感もあります。また自身も決定層になり得ます。そういうダイレクトな仕事の仕方は、Sansanの面白さを感じる部分であり、時に難しい部分でもあります。
上原さんが感じる、SansanのUI/UXデザイナーならではの面白さや難しさはありますか?
上原:「Sansan」はプロダクトとして10年以上提供し続けているサービスで、もちろんニーズも10年前から変化しています。ですが、そのニーズの切り替わりは、グラデーションのような、わずかな変化の連続なんですよね。難しいと感じるのはまさにそこです。過去の体験とこれからの体験を切り離さず、きちんとつないで、今必要とされる体験をつくっていくこと。言葉にするのは簡単ですが、昔のニーズを踏襲しながら新しい体験をつくるというのはそう簡単な作業ではありません。
難しいと感じますが、その分、過去と未来の点が線となってつながり、数値に現れた時などは大きな達成感を得ますね。
BX部ではそのあたりはどうですか? 過去は過去として、今年のテーマはこれだからとスパッと切り替えますか?
戸羽:いえ、僕らの仕事は、ブランドとして長く愛されるようなものをつくることなので、これまでのものを守ることも大切にしています。
もちろん社内でデザインをガラッと変えた方がいいという声もありますし、今のトレンドを取り入れた方がいい場面もあるのですが、やはり過去から続く統一感を持たせることはデザインする上で意識していますね。
石川:UI/UXのデザインとブランディングのデザインで「過去」と「未来」というものがすごく大事になってくるんですね。それをうまくつなげることがデザインにおいて重要だと。
このふたつにおいてどのような点が異なってくるのかも気になります。
ひとりよがりではなく
必要なのは「情報整理」に基づいたデザイン
もちろん、アウトプットしたあとの用途に違いがあるのは大前提ですが、どちらかといえば異なることよりも、共通することが多いんじゃないかな。
UI/UXデザインだと、どの立場の人がどんな状況で使うのか、常にユーザーの体験を想像しながらデザインしますが、それはブランディングのデザイナーにおいても同じだと思うんです。
戸羽:どういった場面でどんな人が見るのかを想像し、データを元に考えるというのは共通していますね。僕らがデザインをする時は、どんな風に見た人の気持ちを変えられるかに重きがあって、「ただかっこいいから」というだけの理由で制作している人はいないですね。
そういった思いって、Sansanがつくっているノベルティひとつひとつにも込められていて。おもしろいからつくるという動機ではなく、いかにSansanの魅力を広めるかを考えてデザインしています。UI/UXデザイナーもブランディングのデザイナーもそこは同じ気持ちなので、お互いのことをもっと知って全体を良くしていこうという動きがありますよね。
グループの枠を超えて、クリエイティブな活動を行うプロジェクト「Juice」もそうですし、デザイナー同士で仲は良いと思います。
石川:そうですね。「Juice」もあってか、デザイナー同士のコミュニケーションは活発ですよね。
その他にはどういった部分が共通していると感じていますか?
戸羽:「情報整理力」が必要なのも共通することかもしれないですね。Sansanには新たに「UXリサーチセンター」というものが開設されて、ひとつのプロジェクトを進めるにしても内外含め様々な意見をリサーチ、整理してから行います。それに加えて、さらに必要な情報は自分で取りに行きます。それら多様な情報を整理してデザインに落とし込むということは共通していますね。
Sansanでデザイナーとして成長したと感じるのはどの部分でしょうか?
戸羽:情報を集めるためのコミュニケーション力は相当上がったと感じます。「これだけ経験を積んでも、まだこんなに成長できる部分があるんだな」と感じますね。デザイナーは作りたいものが決まると視野が狭くなりがちなのですが、Sansanでデザインをする上では周りからの情報をいかに収集するかということも大事。他部署の情報が次々とSlackに上がって、わからないことがあったらすぐに聞けるのは、デザイナーにとってありがたい環境です。これも事業会社、Sansanならではの強みだと思いますね。
上原:「ユーザ理解」の部分ですね。ユーザーの立場になって考えることが大事、と言っても、実態としてUI/UXデザイナーって名刺交換の機会がとても少ないんですよね。
これまでも自分なりに理解への意識はしていたのですが、今思うと数年前は「理解したつもり」だったなと思っています。
その理解を深める為に、