事業の要を担うと言っても過言ではない、事業企画部。2024年5月、提供領域の拡大を発表したインボイス管理サービス「Bill One」の事業企画部を統括するのが、今回の出演者である加藤です。さまざまな経験を積んだ末にSansanへ入社した加藤が、変化のさなかにある「Bill One」の事業企画部をどのような組織にしていくのか。そして、今だからこそ経験できることとは何なのか、聞きました。
PROFILE
加藤 健一Kenichi Kato
Bill One事業部 事業企画部 部長
大学卒業後、印刷会社、外資系通信企業で主にセールスに携わる。その後、コンサルティングファームで総合商社などに対し業務改革、システム導入などのコンサルティングに従事、プロジェクトマネジャーを担当。大手情報機器メーカーへ転職後、マーケティングと事業推進全般を統括。前職の会計ソフトメーカーでは新規事業開発やセールス、マーケティングを幅広く管掌し、2024年7月にSansan株式会社へ入社。
営業、コンサルティングファームを経て
事業責任者を経験
これまでのキャリアについて教えてください。
まとめると大きく3つに分けられます。最初の10年間は営業としてまい進し、その後はコンサルティングや事業企画のような、戦略を整えて組織に落とし込む仕事をしました。直近の10年ほどは組織運営や事業責任者といった仕事をしています。
営業を経験する中で培ったのが「調整力」です。信頼を築くための土台となるコミュニケーションを身につけました。その後、縁あってコンサルティングファームに転職しましたが、営業しか経験していなかったので正直苦労しました。新卒でコンサルティングファームへ入り、20代後半でマネジャーになるようなエリートにはどうやってもかなわない。そこで、ロジックの部分は自分で勉強してキャッチアップするとして、自分の強みであるコミュニケーション力や調整力で勝負しようと考えました。
営業として培ったものですね。
はい。「この人は信頼できる」と思ってもらうコミュニケーションは自分の強みだと考えていて、それを生かすことでビジネスコンサルタントとしてユニークなポジションを取ることができました。「加藤を送り込むと燃えている火を消しながらとりあえず走らせてくれる」と言われるようになり、トップマネジャーやパートナーから重宝されるようになりました(笑)。
ただ、ちょうど子供が生まれたこともあり、ライフワークバランスを保ちたいと思うようになりました。そして次に選んだのが、グローバルにも事業を展開している大手情報機器メーカーです。新規事業部門のマーケティング担当として、クラウドセキュリティーのアウトソーシングサービスを立ち上げるような、いわゆるプロダクトマーケティング組織のチームリーダーを担っていました。最終的にはマーケティングと事業推進の責任者も務めました。
その次が前職の会計ソフトメーカーになるわけですね。
はい。ダイナミズムのある、経営に近い仕事をしたいと考えるようになり転職を決めました。
前々職と違い、前職の会計ソフトメーカーは従業員数800名程度、全部門の顔が見渡せる程よい規模感で、経営に近いところで仕事ができました。最初の1年ほどは新規事業の立ち上げや中期事業戦略の策定など、重点プロジェクトの中核を担う、エキスパートのような立ち位置でプロジェクトをマネジメントし、そこから役割の範囲を広げていきました。本業であるクラウド会計サービスのリード獲得から契約更新率の向上まで、セールス&マーケティング全般のエコシステムを整えるために、オンラインで簡単に会社を設立できるサービスや、オンラインでM&Aのマッチングができるプラットフォームなど、新規事業の立ち上げも行いましたし、事務所や各種ディストリビューターを束ねるパートナービジネスの事業責任者として事業戦略、組織開発、人材採用や育成なども行いました。
情熱的に話す経営陣の姿に
心を打たれ、転職を決断
Sansanに転職を決めた経緯を教えてください。
きっかけは、Sansanから届いた一通のメッセージでした。当時は自身で新しいビジネスを立ち上げている最中でしたし、正直、転職する気は全くなかったのです。ただ、その文面がありきたりなものでなく、私が取り上げられた記事などもしっかり読んだ上で投げかけてくれたような印象的なものでした。少し時間がたった頃にふと思い出し、Sansanの役員でBill One事業を統括する大西さんと会うことになりました。
そこで、大西さんが真顔で開口一番に「本当に社会を変えていきたい」と言ったのです。それがとてもいいなと感じました。その後に人事の取締役である大間さんと会ったところ、同じ熱量を感じ、大人が情熱的に語っている姿はすてきだなと思いました。加えてSansanのことを楽しそうに話す姿を見て、「こういうまっすぐな人が人事の役員をやっている会社は面白いな」という印象を持ちました。
ただ、それだけでは動けません。決め手になったのは、Bill Oneの事業フェーズが極めて面白かったことと、代表の寺田さんがCPO(※1)も兼ねていて、プロダクトに責任を持っていることでした。メーカーとして、価値を創造する「プロダクト」に代表がしっかりコミットしているのはとても大切なことです。
Bill Oneの事業フェーズとしては、T2D3(※2)を上回るスピードで成長している一方、さらなる成長を目指すにあたっては組織や事業の改善点も残されていると感じました。自分がこれまでに積み上げてきたスキルや知見を組み合わせて活用していけば、そうした点を解消できるのではないかと考えたのです。つまり、組織の今のフェーズを考えた時に、前の会社よりもSansanの方が自分という資産を投下した時のレバレッジがより大きいのではないかと感じたのです。
(※1)Chief Product Officerの略。最高製品責任者。
(※2)SaaSの売上を前年の3倍、3倍、2倍、2倍、2倍と上昇させていくこと。SaaSの理想的な成長モデル。
存在意義を定義し、
さらなる事業成長の要の組織へ
今後、事業企画部で何に取り組んでいこうと考えていますか?
まずは「私たちは何をする組織なのか」という存在意義を定義したいと考えています。一人ひとりがとても優秀で、一所懸命に業務に向き合っている一方で、存在意義の共通した認識が定まっていないためにやるべきことの取捨選択が難しいことがあります。ですから、まずはどこに向かって走っていくのか、全員がより同じ方向を向いていけるように、共通認識を持てるようにしたいと思っています。
その上で、最も重要なのは事業企画です。Bill Oneは17期、ARR75億円を超えました。ここからT2D3の達成、そしてさらに大きな目標を立てようとしています。普通ではないですよね(笑)。私たちはそこに挑戦していくのです。当たり前ですが、これはただ言っているだけでは絶対にたどり着けませんから、戦略を考えなくてはなりません。事業企画部はその要として、戦略立案、実行するにあたっての組織機能の設計、マネジメントまでをも担っていきます。そのために、私は事業部長の参謀的な役割を担い、組織の強みを生かしながら、足りないところを補っていきます。
Bill One事業部を含め、Sansanという会社は数字を作れる人が多いと感じています。これは、ミッション・ビジョンドリブンで「事業家気質・投資家気質の経営者」と「実行力の強い組織」という2つがそろっているからでしょう。これまではそういったSansanの強みと、電子帳簿保存法などの税制改正やインボイス制度の導入などの市場の追い風があり、小集団ながら急成長を遂げてきました。これからが、本当の意味での事業企画が求められるフェーズになるのではないでしょうか。目標の解像度を上げ、達成に向けた具体的な戦い方としての「戦略」を整え、それを実行するうえでの「組織・機能」「業務標準」を整えていくことができれば、もともと強みとして持つパッションや実行力とブレンドさせて、より強い企業になれると考えています。
これから、事業企画部での仕事を通じて経験できることを教えてください。
主に3つあります。1つが、事業計画管理です。そもそもどのくらいの規模感のビジネスを、どういった時間軸の中で作っていくのかというビジネスプランニングのタイミングから関わり、セグメントごとの受注計画、商談数、マーケティングのリード数なども含めた戦略的な係数管理や事業計画管理を行うことができます。その事業のヘッドになれるタイミングでもあるため、成長カーブを描く企業の中で会計やファイナンスの領域で肌触りのある仕事をやりたい人には最適な環境です。
2つ目が、どの市場でどのセグメントに対してどのようにポジションを取っていくのか、競争戦略を作れる面白みがあります。今後のさらなる事業成長を目指すには、顧客のニーズを読み取り、その解像度を高め、マーケットの競争環境を分析した上で、差別化要素を明確にし戦略を考えていく必要があります。コンサルティングファームであればそこで終わりですが、私たちは事業会社ですから、立てた戦略の実行まで担うことができます。
そして3つ目が、時代の変化を洞察した上でサービスを磨き込んでいけること。どういう時間軸でどんな価値を実装していくのか、市場の競争戦略を踏まえたプロダクトの価値提供戦略を考えていける面白さがあります。これは自分たちでサービス開発を担っている企業だからこそです。
「伸びしろ」のある組織で、そうした仕事ができるわけですね。
はい。相応の白地がありますし、そこに色をつけていくことができます。数字という面でも、全体を俯瞰して中長期的に組織でどう数字を上げていくかを考えられる力が身につきます。
ビジネスの起点に関われる、貴重なフェーズ
今後、どんな人と一緒に働きたいですか?
ロジックとエモーションのバランスを取れる人、でしょうか。人と人との間のエモーショナルな部分と、物事を定量・定性の両面でロジカルに説明することはプロジェクトを進行する上でどちらも必要です。その2つの配合はケース・バイ・ケースで、コミュニケーションの目的やそのコミュニケーションをした結果どういう状態になりたいのか次第で、ハイブリッドの比率をコントロールしていかなくてはいけません。それをしっかり考えられる方と一緒に働きたいですね。
これからジョインする方へ、メッセージをお願いします。
現在、Bill Oneは「Model 4(※3)」へと進化していて、請求書の受領から請求書の発行・経費精算へと提供領域を大幅に拡大しました。まさに「大きく変わっているタイミング」です。1から10、10から100というような、起点となるフェーズからビジネスに関わりたい人にとっては、このタイミングでジョインすることに大きな意味があるでしょう。これまでの流れを把握しながら次の絵を描いていける端境期だからです。ワクワク感も大きなものがあるはずですし、先々「自分が作った事業」と自信を持てるのではないでしょうか。
※3 4つめのプロダクトモデル。詳しくはこちら
何より、T2D3を達成したサービスは全国でも数えるほどですし、私たちはすでにその先を目指しています。そういった貴重なフェーズに、財務的安定性と、スピード感を両立している企業に身を置けることは、何とも比較ができない貴重な経験になるでしょうね。
ありがとうございました。