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Sansanの
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クリエイティブの力でビジョンを伝える。初の企業ブランドCMに込めた意思と意図

Sansanは2013年、初めてのCMを放映開始しました。松重豊さんの「それ、早く言ってよ〜」というフレーズを耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。それから10年目となる今年の8月、初の企業ブランドCMを公開しました。今回は、Sansanのクリエイティブを統括し、CMをはじめとしてさまざまなブランディング施策を手がけてきたクリエイティブディレクターの田邉に、初の企業ブランドCMを通して伝えたかったことを中心に話を聞きました。
 

 

PROFILE

田邉 泰Yasushi Tanabe
執行役員/CIO​/クリエイティブディレクター

フロントエンドエンジニアを経験後、広告業界に転向。デジタル領域を中心にさまざまな広告制作に携わる。2014年にSansan株式会社へ入社。ブランドコミュニケーション部を立ち上げ、社内のクリエイティブを指揮。現在は全社のクリエイティブ、情報システムを統括する。


Sansanが「お茶の間」にも
認知されたきっかけ

これまでさまざまなブランディング施策を手がけてきた田邉さんですが、今日はCMのお話を中心に伺わせてください。松重豊さんの「それ、早く言ってよ〜」というフレーズが印象的で、SansanといえばあのCMを一番に思い出すという人も多いと感じています。振り返ってみて、サービスや事業の成長にどんな影響があったと考えていますか。

そもそも営業DXサービスのSansanはBtoBのサービスなので、認知してもらえる範囲がとても限定的です。それがあのCMによってお茶の間にまで届けられたことで、普段サービスを使わない人たちにも「あ、あの会社だ」と思ってもらえるようになったことは大きかったです。

商談の場でも、「CM見たことありますよ」と言ってもらえることが増えたり、決裁者の方がSansanの名前を知っていたので話がスムーズに進んだりということもありましたし、採用力も上がりました。

それまでは営業にしても、採用にしても、認知がほぼゼロの状態からスタートしなければいけなかったので、あのCMを作りはじめたことは今のSansanの成長にもつながっていると感じます。

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「クリエイティブの力」を信じていた
トップの想い

2013年に第1弾「『面識アリ』篇」を作った時から10年間、クリエイティブエージェンシーのTUGBOATと一緒に制作をしていますね。もともと代表の寺田さんが直接、SansanのCMを作ってほしいと依頼しに行ったと聞きました。

私が入社する以前は、代表の寺田が先頭に立ってブランディングを指揮していました。寺田は「クリエイティブの持つ力」を信じていて、会社のステージを上げるためにはブランディングがとても重要な要素の一つだと考えているんです。

当時、広告業界にコネクションがない中で、直接クリエイティブエージェンシーに声をかけるというのも、あまり前例がないことでしたが、「本当にこだわり抜いたものでなければ、伝えたいことは伝わらない」と考え、それを実現してくれそうなTUGBOATに依頼をしました。

CMのみならず、ブランディング全体を寺田さんが指揮していたのですね。今は田邉さんがその役割を担っていますが、そういった経営者の思いを汲み取ることができたのはなぜだと思いますか?

自分が完璧にできている、とは全然思わないですが、経営者というものは常に全ての物事を俯瞰して見ているので、同じ目線で話ができるように、社内外で起きていることを幅広くインプットしてから議論にのぞむということは心がけています。

コロナ禍に制作した第7.5弾のCM「『2020 春』自宅でやられた篇」では、一つの場所に集まっての撮影ができない状況で、初めて遠隔での撮影にチャレンジしたと聞きました。

緊急事態宣言が発令され、出社がままならない状況となった中、リモートワークでもオンライン名刺交換が可能になる「デジタル名刺」をリリースした時のCMでした。

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ビジネスインフラを目指すSansanとして、ユーザーのビジネスを止めないために何ができるか。デジタル名刺はそのような考えのもと、当初の予定を大きく前倒ししてリリースしました。CMも第8弾を制作する予定で進めていたのですが、デジタル名刺は今こそ世の中に知ってもらわなくてはいけない。そう考え、急遽スピンオフという形で第7.5弾の制作を決めました。どうやったら三密を避けて撮影できるか、TUGBOATのみなさんと考えて、通常は急いでも放映まで3カ月はかかるところを、企画から放映まで約3週間で完成させました。

すごいスピード感ですね!改めてCMのシリーズを見返してみると、この10年のビジネスシーンにおける出来事や変化を感じました。10年間CMを作り続けてきて、今回初めてサービスではなく企業としてのCMを制作しましたが、このタイミングで初の取り組みに至った背景を教えてください。

Sansanといえば古くからある「名刺」をイメージする人が大半だと思います。しかし私たちが手がけている領域は「名刺」を超えてどんどん広がってきています。Sansanという単一のプロダクトのみならず、請求書を扱うBill One、契約書を扱うContract Oneといったプロダクトも含め、社会にとってなくてはならないものを作ろうとしています。

しかし、Sansanというブランド自体が、例えばAppleやSONYのように確立されているかと言えば、まだまだそうとは言えません。「名刺」という古いイメージに引っ張られて、Sansan社が提供するプロダクトの革新性が薄れてしまわないように、ブランドをもっと進化させる必要があると感じています。

そのために、日々顧客へ提供している価値だけでなく、もう一段上のレイヤーでプロダクトに込めた想いを語り、Sansanブランド全体を引き上げようと考えました。


10年目、初の企業ブランドCMを制作
SNSを中心に大きな反響

今回の企業ブランドCMでは、「会社員」というキーワードが印象的でした。これはどういう背景でメッセージに含まれたのでしょうか。

TUGBOATのみなさんを交えて議論する中で出た、寺田の気づきが始まりでした。「社会人と呼ばれる人の大半ってつまり『会社員』だよね」と。職業や働き方、立場が違っても、さまざまな形で「会社」というものと関わりながら仕事をしていて、広い意味で「会社員」と言えるよね、という考え方を軸に議論を重ね、メッセージを具体化させていきました。

そうして生まれたのが、「社会人と呼ばれる人のほとんどは、つまり『会社員』だ。『会社員が動きやすい日常』をイメージすれば、新しい景色が見えてくる。」というメッセージですね。私は初めて聞いたとき、「働きやすい」ではなく、「動きやすい」なのはなぜだろう?と思いました。

メッセージとしてはとてもシンプルだと思います。世の中の、社会人と呼ばれる人たちのほとんどが会社員だとしたら、その人たちが動きやすくなっていくことで、新しいビジネスが生まれたり、イノベーションが生まれたり、世の中が良くなることに直結するのかなと。

そしてこれは、「働き方」だけに閉じている話ではないと思ったので、「動きやすい」にしたんです。「働きやすい」という言葉だと、労働時間や環境の話など、ちょっと狭い次元の話になってしまうなと思いました。

私たちが作っているサービスを活用してもらうことで、仕事が効率化され、働く人がもっと本質的な業務に向き合うことができる、つまり動きやすくなる。そうすることでもっとビジネスがうまくいくようになって、世の中に生き生きと働く人が増えてくるだろうし、新しい世界が見えてくる。そんなイメージです。

SNSを見ているとすごくたくさんの方に見ていただいたことがわかります。いただいた反響は大きく二つあって、メッセージへの共感と、キャスティング含めたクリエイティブへの賞賛です。

サービスCMの第1弾から登場いただいている松重豊さん、野間口徹さんに加えて、初めてコントユニット「ダウ90000」主宰の蓮見翔さんを起用させていただきました。蓮見さんにお願いすることになったのは、TUGBOATに提案してもらったことがきっかけです。

公開してみると蓮見さんを起用したことへの反響もとても大きく、改めて影響力の大きさを実感しましたね。たくさんの人に見ていただくことにつながって、良かったなと思います。

今回の企業ブランドCMのいちばん最後に、「Sansanもまた、会社員による会社である。」というメッセージが出てきます。あれは、今一緒に社内で働いている仲間に向けて伝えたいことがあってのものなのかな、と思ったのですがいかがでしょうか?

はい。Sansanで働く私たちももちろん会社員であり、自分たちのビジネスを通じて世の中を良くしようと努力している社員ばかりです。みんなにも胸を張ってほしいし、会社員であることに誇りを持ってほしいと思っています。


「今だから」じゃなく
「常に新しい」のがSansan

ありがとうございます。Sansanで働くことについてのお話も少し聞かせてください。来年は本社の移転も決まっていて、社内ではよく「次のフェーズ」というキーワードを聞きます。いち社員として、大きな変化の前夜のような雰囲気も感じますし、このタイミングで初めての企業ブランドCMを作ったのも象徴的なことのように感じています。田邉さんにとって、今のフェーズでSansanで働くことの意味ややりがいについてはどう考えていますか?

私が入社してからも本当に色々な変化がありましたが、Sansanはものごとが進むスピードがものすごく早く「常に新しい状態」だと感じます。そういう意味では、「今だから」ということはあまり思いません。どの時点でも、新しいフェーズにいるという感じでしょうか。

外から見てみると、成長したように見えるかもしれませんが、何かが出来上がったという感じは全くないと思っていますし、経営陣も他の社員もそう思っていると思います。

物理的に社員数の増加などはありますが、創業期から掲げていた「新しい当たり前を作る」ということだったり、ビジョンである「ビジネスインフラになる」ということにどれだけ近付けているかというと、まだ指一本もかけられていません。それだけ壮大なチャレンジをしているということなので、やるべきことはたくさんありますし、常に刺激的な環境だと思います。

それでは最後に、どんな人と働きたいか教えてください。

オーナーシップを持っている人です。「自分が会社を動かしていくぞ」と思ってくれている人には、どんどんいろんなことを任せたいですね。

組織の中で、一つの歯車として動いていたり、言われたことだけをやっている人ではなくて、自分自身がSansanを動かしているんだ、世の中を変えて行くんだという気概で仕事をする人。そういう人に会社員の誇りを感じますし、一緒に働きたいと思います。

そういう人がさらに増えていくと、「ビジネスインフラになる」というビジョンの実現にもっと近付けるのではないかと思います。

 

 

text&photo: mimi