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リーガルテック領域で新たな可能性を追求。Contract OneをSansanの新たな事業の柱に

Sansanではこれまで、研究開発部門でのAI技術研究やオペレーター体制によって、大量のアナログ情報を素早く低コストでデジタルデータ化するフローを構築してきました。Sansan技術本部のStrategic Products Engineering Unit(以下、SPEU)では、このノウハウを活用して複数プロダクトの立ち上げを推進しています。

SPEUが開発に注力するプロダクトのひとつが、契約データベース「Contract One」。今回はこのプロダクトに関連するチャレンジについて、SPEU部長の岩下弘法とプロダクトマネジャーの尾花政篤に聞きました。

 

PROFILE

尾花 政篤Masashige Obana
Contract One Unit PdM

東京大学経済学部卒。2013年4月より株式会社ベイカレント・コンサルティングにて、主に保険会社を対象としたマーケティング・IT戦略立案やIT投資管理などに従事。 2017年8月に株式会社hokanを創業し、代表取締役に就任。保険代理店向けの顧客・契約管理システムhokanを開発・提供。2023年3月末に退任。 同年6月にSansan株式会社に入社。契約DXサービスのContract One PdMを務める。

岩下 弘法Hironori Iwashita
Strategic Products Engineering Unit 部長

学生時代にプログラミングを学んだ後、複数の企業で ERP や HRM のシステム開発に従事。様々な業界にてシステム導入や Web アプリケーション開発を経験した後、2013年に Sansan に入社。 営業 DX サービス Sansan で多くの機能開発をリードしつつ、企業の成長に合わせてマネージャーの役割も担う。6年半プレイングマネージャーを担った後、新規事業プロダクトの立ち上げにスイッチ。そこから4年半で3つの新規 SaaS プロダクトの立ち上げにエンジニアリングマネージャとして関わっている。


リーガルテックでは後発ながらも
「Sansanの強み」を活かして勝ち筋を模索

まずは簡単にお二人の経歴を教えてください。

岩下:今まで複数の企業でERPやHRMのシステム開発に従事してエンジニアとしてのキャリアを積んできました。エンジニア10年目のタイミングとなった2013年に Sansan に入社しました。入社直後は営業DXサービス「Sansan」の開発チームに配属され6年半ほどキャリアを積みました。役割はソフトウェアエンジニアからチームリード、プレイングマネジャーなど組織の成長に合わせて自身の役割もシフトしていきました。その後、ビジネス側の要請と自身のチャレンジを重ねて、新規事業開発室に異動し、サービスをゼロから立ち上げる経験を積みました。この新規事業開発室の開発部隊が、マルチプロダクトを掲げる弊社の中で戦略的なプロダクトの開発を担うということでSPEUと部署名称を変更し、その組織長を担っています。

尾花:私は2013年に新卒でベイカレント・コンサルティングに入りまして、保険業界を中心にマーケティングや戦略立案などをしていました。保険業界は非常にレガシーで、非効率的な業務やアナログな仕組みが数多く残っています。そこにチャンスがあると考え、「保険業界×IT」というテーマで2017年に株式会社hokanを創業しました。2023年にhokanの代表取締役を退任した後に、Sansanに入社したという経緯です。

「Contract One」は企業の契約情報を取り扱うサービスですが、どのような強みがあるのかをビジネス観点でお話しください。

尾花:「Contract One」は、Sansanの他の主力プロダクトとは異なるチャレンジをしています。「Sansan」は名刺管理サービスという市場を、「Bill One」は請求書受領サービスという市場をそれぞれ新しく切り拓いてきました。一方、リーガルテックという領域ではすでに他社によるサービスが存在していて、「Contract One」は後発のサービスになります。

この状況のなかで、「いかに“Sansanらしさ”を強みにして戦っていくか」という勝負をしています。最初のフェーズで解決しようとしている課題は「契約のデータベースを作ること」です。既存のリーガルテック領域では、デジタル上で契約が締結できるとか、AIが契約書をレビューするなどのサービスが存在しています。

ですが、締結後の管理を担うサービスはほとんど存在せず、アナログな業務がまだまだ多いです。Sansanは紙やPDFをデジタルデータ化することに強みがあるので、これを活かして競合と戦っていきたいと考えています。

また、契約というのは法務担当者だけが取り扱うものではなく、あらゆるビジネスパーソンが日々参照するものです。契約はビジネスのルールブックとも言えるもので、普段から意識しているしていないに関わらず、売上・損失に影響を与えています。そこで、契約のデータを誰にでも使いやすくすることも目標として掲げています。

メンバー同士がリスペクトを持ち、
プロダクトと向き合う

「Contract One」のプロダクト開発の特徴はどのような点にありますか?

岩下:私が好きなSansanのカルチャーの一つに他職種へのリスペクトが強いという点があります。「Contract One」は他のプロダクトと比べてチームの規模がコンパクトなので、他職種の人たちと密にコミュニケーションを取りつつ開発を進める場面が多いです。

プロダクトマネジャーやエンジニア、デザイナー同士の距離が近いのはもちろん、開発職のメンバーがカスタマーサクセスや営業などビジネスサイドの人たちとコミュニケーションを取る機会も多いです。エンジニアはただ決められた仕様の通りにものを作るのではなく、「どんなお客さまが何に困っていて、どう解決すればいいか」を考えながら開発していける。その意思決定に携われるのは、「Contract One」プロダクト開発の面白さだと思います。

また、もともと「Contract One」は紙の契約書の印刷・製本や押印、郵送というようなアナログな作業を代行するところからスタートしているんですね。単にシステムのことだけを考えるのではなく、そういったオペレーションセンターの業務フロー設計なども含めて構築していくところにも面白さがあります。

それから、「Contract One」にはGPTを活用した「AI要約機能」を搭載していますが、こうしたLLM(Large Language Modelsの略。膨大なテキストデータから学習し、高度な言語理解を実現する技術)を活用した機能開発にはSansan社内でもかなり早い段階から取り組みました。SPEUではメンバー全員の立場がフラットで、「挑戦したい」と手を挙げてくれる人には積極的にチャレンジしてもらっています。そのような文化もあり、新しい技術を使った機能開発も最速でリリースすることができていると思います。

「Contract One」の成長をさらに加速させる

「Contract One」の今後のプロダクトビジョンについて教えてください。

尾花:リーガルテックという領域は、かなりレッドオーシャンです。だからこそ「Contract One」では、「いかにしてSansanにしか生み出せない強みを積み上げるか」を非常に重視しています。その最たる例が、アナログな情報を正確にデジタルデータ化し、かつデータ同士の関係性を適切に構造化できることです。このノウハウを活用して、機能を提供していきたいと考えています。

たとえば、「Contract One」で契約書をデータ化するだけで、基本契約を親契約、個別契約や覚書などを子契約として自動で判別してひも付ける、契約ツリーという機能を出しています。

さらに、「契約終了間近の契約書」と検索で入力すると、その意図をLLMが自動的に判断して適切な契約データを発見するような、AIが伴走して意思決定を支援してくれる世界観も実現できたらと構想しています。ビジネスパーソンの日常業務のなかで、契約データを当たり前に活用してもらえるように、機能展開をしていきます。

どのような要素を持った人が「Contract One」の開発に向いていると思われますか?

岩下:新規プロダクト開発では予想外のことがたくさん起きるので、失敗したときでもうまく自分のマインドセットを変えられる人がいいですね。それから、自分がこれまで携わってきた領域にとらわれることなく、適切に過去の経験をアンラーニングして違う分野にもチャレンジできる人は、すごく適性があると思います。

柔軟な考えを持って、失敗やネガティブなフィードバックも「自分が成長するための糧になる」とポジティブに受け取れるマインドセットを持っている人は魅力的ですし、そういった人にリーダーシップを持ちながら、周りの人と一緒にプロジェクトを推進してほしいです。

尾花:変化を楽しみながら挑戦できる人であってほしいです。「Contract One」がPMF前だからということもあり、数カ月単位で事業戦略がガラッと変わることが多いんですね。小規模なスタートアップ以上に方針転換が早いのではないかと思うくらいです。そういった変化を前向きにとらえて、事業に貢献していける人に来てほしいです。

それから、このプロダクトがPMFしてスケールさせていくフェーズでは、Sansanのかなりのリソースが投入されます。「Bill One」の急速な事業拡大からもわかるように、そのフェーズでは事業や組織がすさまじいスピードで成長するでしょう。そういった変化を経験したい人にも、「Contract One」はきっと合っているはずです。

 

 

text&photo: mimi