毎日仕事をする中で、生理やPMS(月経前症候群)といった女性特有の健康課題に悩んでいる方は少なくありません。
「腹痛や吐き気がひどくて会社を休むことがある」
「生理前は気分の浮き沈みが激しく、すぐに落ち込んでしまう」
「些細なことでイライラしてしまい、仕事に集中できない」
頑張りたくても頑張りきれないことに、悩みや不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。目に見える不調ではないからこそ、周囲になかなか相談できず、一人で抱え込んでしまっていることもあるかもしれません。
こうした女性特有の健康課題に対応するために、Sansanが導入しているのが「オンラインピル処方費用補助制度」です。オンライン診療と低用量ピルの処方にかかる費用を、会社が補助します。
今回は、本制度をはじめ、社員が生産性高く働くためのあらゆる制度を推進している我妻にインタビュー。同じ女性という立場から、制度の導入に至った背景や制度にこめた思いなどを聞きました。
PROFILE
我妻 小夜子Sayoko Wagatsuma
人事本部 Employee Success部 DEI & Wellnessグループ グループマネジャー
大学卒業後、専門商社で営業を経験後人事部門で新卒採用を担当。2013年12月にSansanに入社し、人事部門にて社内制度設計・運営を中心に、人事評価、障がい者採用、全社イベント、マネジメント業務などを担う。2021〜2022年に産育休を取得し、復帰後はグループマネジャーとしてダイバーシティ推進と健康増進から事業成長を後押しする取り組みに従事。
女性社員の約7割が、生理やPMSが
もたらす影響に課題を感じていた
制度の概要について教えてください。
オンラインピル処方費用補助制度は、低用量ピルの処方と、処方に当たって必要なオンライン診療にかかる費用を、会社が補助する制度です。生理やPMSのつらい症状をケアし、日々のパフォーマンス・生産性向上を後押しすることを目的としています。
全額補助対象のピルは6種類です。また、その他の低用量ピルや超低用量ピル、ミニピルについても、計8種類が一部補助の対象です。(2024年10月時点)
オンラインで5〜10分ほど医師による診察を受けた後、郵送で薬を受け取ることができます。副作用の対策薬として吐き気止めやむくみ止めの薬が必要な場合も、会社負担で処方されます。
制度の導入に至った背景は何だったのでしょうか。
前提として、Sansanのあらゆる社内制度は「社員一人ひとりの生産性を高め、事業成長を加速させる」ことをポリシーにしています。
Sansanは毎月数十名単位が新たに入社するというペースで急拡大を続けており、多様なメンバーが働いている組織です。全員が思い切り仕事に打ち込み、安心してチャレンジできる環境を整えるためには、社員の健康維持の後押しは非常に重要です。
その中でも、特に課題感が強いテーマとして目を向けたのが、生理・PMS対策です。
ピルの費用負担制度の案が出た当時は、育児支援制度である「OYACO」をリニューアルしたタイミングでした。その際、育児以外にも女性社員の働き方を支援する方法があるのではという議論になったのです。そこから、生理・PMS対策や不妊治療、卵子凍結といった領域に目を向けるようになりました。
中でも、対象者が多いこと、大幅な生産性向上につながることが見込まれることから、まずは低用量ピルの費用負担制度から具体的な検討を開始し、導入することに決めました。女性の生理・PMS症状がおよぼす影響は、社会的な課題としても注目されています。実際、生理・PMSに伴う労働生産性損失額は約5,700億円と算出されています。(※)
※出典:経済産業省「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」
導入前、社内でも生理やPMS症状に悩まされているという社員の声は多かったのでしょうか。
「PMS症状に悩まされている」「生理痛で思うように仕事ができない」といった声が複数寄せられていました。制度導入前に社員に実施したアンケートでは、女性社員の約7割が、仕事をするうえで生理やPMSに課題を感じていると回答していました。生理やPMS症状によって、月の半分近くはパフォーマンスが低下してしまっている、という声もあったほどです。
本格導入前のテスト段階で、すでに100名以上の女性社員が制度の利用を希望しており、改めて深刻な課題であることを実感しましたね。
導入に当たって大変だったことや苦労したことはありましたか?
ピルにもさまざまな種類があるため、どのような薬剤を会社補助とするかはじっくり検討しました。約1年の試験導入によって実際に効果があることがわかってからは、経営陣の理解もあり、スムーズに本格導入が決まりました。
制度導入後、女性社員の
パフォーマンスや生産性向上を実感
本格導入から約1年が経過した今、制度によってどのような効果が出ていますか?
総じて、仕事の生産性アップやパフォーマンス向上につながったという結果が得られましたね。症状が緩和されたことで、会社を休んだり早退したりする日数が減った、という利用者が多かったです。
もともと勤怠には影響が出ていなかった社員からも、「日中のモヤモヤやイライラが解消され、仕事に集中できるようになった」「パフォーマンスが向上した」といった、ポジティブな声がたくさん寄せられました。
▼導入後のアンケート回答抜粋
「通勤時電車での途中下車や体調不良の早退などもありましたが、それがなくなり定時で働けるようになりました。」
「生理不順だったので常にいつ来るか心配でした。ピルを飲み始めてから生理がくるタイミングがわかるようになり、無駄な心配事が減りました。より仕事に集中できるようになりました。」
「PMSが改善され、生理前の集中力の低下がなくなりました。生理期間が正確になり、生理痛や出血量もかなり減ったため、仕事に影響が出なくなりました。」
現在、どのくらいの女性社員が制度を利用しているのでしょうか。
現状、制度を利用しているのは女性社員の20%ほどです。産業医によるセミナーを実施することで、ピルに対する正しい知識をお伝えし、ピルを服用することによるポジティブな側面を理解してもらえるよう意識しています。
生産性の向上を実現する、
Sansanの多様な社内制度
女性が働きやすい環境を作るために、ほかにも用意している社内制度はありますか?
産婦人科の専門医とオンラインで面談できる制度や育児支援制度「OYACO」、産休・育休からの復帰をサポートする制度を設けています。もちろん、これらの制度は男性社員も対象です。
専門医との面談制度では、産婦人科診療の経験がある産業医に、女性特有の心と身体の不安や悩みについて相談できます。生理やPMS、更年期症状などを理由に通院することに抵抗を感じていたり、「我慢しないといけない」と感じていたりする方は少なくありません。Sansanで働く女性の心身の健康に関する悩みや不安を和らげ、仕事に集中できる環境を整えたいという思いから、窓口をオープンしています。
OYACOという制度は、育児をしながら働いている社員が対象です。認可外保育園を利用する際の差額や、仕事と育児を両立するためのサービス利用料の一部を補助する制度です。
産休・育休明けの社員に対しては、専門の人事担当者が面談を実施し、スムーズな復職をサポートしています。変化が速い会社だからこそ、安心して復職できるようなサポートに力を入れています。
制度ではありませんが、1カ月以上の産休・育休から復帰した社員を、「おかえりメンバー」として全社に紹介するカルチャーもあります。「おかえりなさい」という感謝の思いを伝え、久しぶりの職場復帰をサポートしたいという考えから始まりました。
社内制度を通じて、
社員の安心と挑戦を提供する
我妻さんは、DEI & Wellnessグループとして、ダイバーシティ推進と健康増進に向けたさまざまな施策に取り組んでいます。社内制度の推進によって、社員が働く環境をどのように変えたいと考えていますか。
Sansanで働く社員が、ご機嫌に毎日を送れるようになってほしいと願っています。そして、より多くの社員が自身の健康に目を向けられるようになってほしいですね。
健康は仕事をする上でも最も大切なことのひとつですが、当たり前であるがゆえに蔑ろにしがちです。しかし、良い結果を出し続けるためには、自身の健康維持に感度高く向き合うことが欠かせません。
低用量ピル費用負担制度のような施策が、自分の健康にオーナーシップを持ち、健康という観点から成果最大化に向き合うきっかけになってもらえればと思います。
社員の生産性向上のために、今後我妻さんが取り組みたいことはありますか?
女性に限らず、すべての社員の成果最大化につながるような取り組みを全社的に進めていきたいと考えています。
Sansanは「挑戦」を大切にする会社ですが、安心して仕事に取り組める職場環境や自身のコンディションが整っていることも、同じくらい重要です。社内制度を通じて、「あと一息頑張ろう!」「新しいことにトライしてみよう!」など、前向きに挑戦するマインドであふれる環境を作れたらと思います。今後も、「安心」と「挑戦」をセットで提供できるような施策を考えていきたいですね。
専属産業医からのメッセージ
オンラインピル処方費用補助制度について、当社の専属産業医である小野先生からメッセージをもらいました。
PROFILE
小野 陽子先生Dr.Yoko Ono
産業医/産婦人科専門医/女性医学会女性ヘルスケア専門医/日本女性心身学会認定医など
聖路加国際病院女性総合診療部(産婦人科)、東邦大学心療内科を経て、心と体のヘルスケアを行えるよう支援する場所作りに従事。複数の産婦人科・心療内科のクリニックでの活動に加えて、オンラインを通じて世界で頑張る女性の相談窓口を開設している。
低用量ピルの費用負担制度を企業が推進する意義について、小野先生の考えを教えてください。
企業が費用負担制度を推進することは、個人の幸せだけではなく、社会的にも大きな利益をもたらすと言えるでしょう。
低用量ピルは、女性が自分のホルモンの波を主体的に乗りこなすために有用なアイテムです。毎月ホルモンバランスの波に振り回されるのは、仕事の効率や生活の質を落とし、自分らしく生きることを困難にします。この問題を解消するために、低用量ピルに代表される女性ホルモン製剤を上手に使うことが有効です。
産業医の先生かつ同じ女性というお立場から、Sansanにおける女性の働きやすさをどのようにサポート・改善していきたいと考えていますか?
現代の女性は、仕事に家庭、介護や育児などやるべきことが数多くあります。マルチタスクをこなしながら、やりがいを感じられるキャリアを形成する環境を整えることが大切です。
そのためには、心身ともに健康である必要があり、不安を感じた際に気軽に相談できる場所が必要です。特に、月経関連の女性特有疾患に関しては、上長や同僚になかなか相談しにくいというデータも出ています。こういった社員の皆さんに寄り添い、成果を上げる一助になれたらと考えています。