
2024年9月30日に渋谷サクラステージへと移転したSansan株式会社の本社。「Nature」というコンセプトのもと、その象徴的な空間として設計されたのがオープンエリアの「Park」です。解放感あふれるこの空間では、日々の気軽な交流から全社会議、さらには外部の方に来社いただくイベントまで開催され、さまざまな出会いが生み出されています。「オフィス・セントリック」を掲げるSansanにおいて、コミュニケーションの源泉となるParkがどのように活用されているのか、人事本部 Employee Success部でParkの活用促進を担当する野村に話を聞きました。
PROFILE

野村 稔Minoru Nomura
人事本部 Employee Success部 Culture & Onboarding グループ グループマネジャー
大学在学中は映像や写真を専門に学び、卒業後は大手カメラメーカーに入社。映像業界で営業やプロモーション企画、新規事業などを担当。その後、大手IT企業にマーケターとして転職したが、事業撤退により人事‧組織開発の部署へと異動。2年間の人事経験を通して、人事や組織づくりを軸に仕事をしていくことを決意。その後100名規模のベンチャー企業でコーポレート人事や、CS・物流部門の責任者を歴任。事業と組織の両方の視点を持って、事業成長のための組織づくりに挑戦している。
部門や会社の垣根を超えた
コミュニケーションを生む出会いの場
新オフィスにおいてParkとは、どのような場所なのでしょうか?
Parkは、渋谷サクラステージ28階のSansan株式会社のオフィスエントランスを入ってすぐに広がる開放的な空間です。社員やお客様、取引先はもちろん、時には社員の家族も含めた多様な出会いを生む場として構想されました。大規模なイベントを開催できるスペースでありながら、社員の日常的な動線上に配置されているのが特徴です。Sansanが掲げる「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションの通り、出会いやそれによって生まれるエネルギーの集積地になるといいなと考えています。
このような出会いの場を設けた背景には、どのような狙いがあるのですか?
社員数は連結で2000名を超え、創業当初は営業DXサービス「Sansan」のみだった事業領域も、インボイス管理サービス「Bill One」、契約データベース「Contract One」などへと広がっています。一般的には、事業の規模が大きくなればなるほど業務は細分化され、一人の社員が関わる仕事の専門性は高まり、社員間の連携の範囲は狭まっていきます。そうなると、部門を超えたコミュニケーションが生まれにくくなることがが課題となります。当社においても、Sansan事業部とBill One事業部のメンバー同士が、日常業務を通して接点を持つ機会は限られてきているのが事実です。
一方で、普段接点のない人との対話から新しい視点が生まれることは少なくありません。Parkのような空間があれば、そんな偶発的なコミュニケーションや気軽な飲みニケーション、他事業部のイベントを偶然目にするなど、執務エリアにこもっていては得られにくい接点を生み出すことができると考えています。
気軽な交流から全社イベントまで
多様なニーズに対応
具体的にはどのような形で活用されているのですか?
例えば、半期末ごとに各部門長からの事業の総括や方針の共有をする「全社会議」や、月に2回、会社の方針やカルチャーを全社員に共有する「S1会議」を、Parkで開催しています。
また、経営陣とのコミュニケーションの場としても活用しています。Sansanでは中途入社者のオンボーディング施策として、入社2~3カ月のタイミングでCEOの寺田や役員メンバーとコミュニケーションを図る時間を設けています。Sansanがミッションを大切にする理由や、会社の方針、想いを伝えることに加えて、経営陣の人となりを知ってもらう機会にもなっています。
経営陣との対話を、会議室ではなくParkで実施する理由は何でしょうか?
以前は、経営陣との対話は会議室で実施していたのですが、よりカジュアルな対話を促すため、Parkでの実施に切り替えました。会議室で整然と並んでパソコンを見ながら話すのではなく、人と人が出会う場としての空気感を大切にしています。会社が大きくなるとどうしても一般社員は経営陣との距離を感じてしまいやすいものですが、プライベートな質問も含めてカジュアルに会話することで、その距離を縮めてもらいたいと思っています。
式典の場としても活用されているとか。
はい。新卒社員の内定式をここで実施しました。2025年4月の入社式もParkで行う予定です。他の会場を借りて実施することもできるのですが、あえてオフィス内にあるParkで行うことには大きな意味があります。社員が普段出入りする場所で新しい仲間を迎え入れることで、より会社のことを身近に感じてもらえますし、先輩社員にとっても新入社員の入社を自分事として捉えやすくなります。
内定式の後には懇親会も実施していて、先輩社員も自由に参加できる形を取っています。他の会場で実施する場合と比べて、より多くの社員が気軽に参加できるので、新入社員とのコミュニケーションも自然に生まれています。
イベントや研修以外に、定時後にも気軽に活用されているようですね。
社員間のコミュニケーション促進のために行っている「ヨリアイ」という施策は、毎日のように活用されていますね。Parkの一角に冷蔵庫があり、業務時間外であればお酒やソフトドリンクを1日3本まで自由に楽しむことができます。以前のオフィスでも実施していましたが、移転後は特に利用頻度が1.4倍になりました。例えば中途入社のメンバーが、オンボーディング研修の終わりに同期のメンバーと交流するなど、気軽なコミュニケーションの場として機能しています。
また、「よいこ」という社内部活があるのですが、その活動の場としてもParkが使われることがあります。例えば、最近は寿司部がParkでランチ会をするということで、私も同期に誘われました。そういう場に参加すると、まったく違う部署の人たちがいるので、新しい出会いが生まれます。
そのような出会いから、「正面から問い合わせをすると、事業部を複数またぐので回答に時間が掛かることでも、よいこでつながった人に気軽に聞けることで業務が効率化している」という声も挙がっています。よいこに限らず、Parkでの偶発的な出会いや小さなコミュニケーションが、仕事のスムーズな進行にもつながると考えています。
ゲストとのコミュニケーションもParkで促進
社外の方々との交流にはどのように活用できるのですか?
例えば、最近始まった「ゲストヨリアイ」は、ご招待した外部の方々がParkで行われるヨリアイに参加いただける施策です。ゲストにはSansanの社内クリエイターが酵母からこだわってつくった「Sansan Innovation Beer」を提供するなど、特別なおもてなしを行っています。また、「Sansan Bar」というイベントもParkで開催しています。Sansanで働くことに興味がある方をお招きし、社員と気軽に話してもらうことで、カジュアルにSansanの組織やカルチャーを体験できる場となっています。
大きなイベントとしては、2024年11月に開催した「渋谷阿波おどり powered by Sansan」の際にもParkを活用しました。社員の家族を招待し、屋台を並べたお祭りを催しました。わたあめやポップコーン、ヨーヨー釣り、フォトブースなども設置して、子どもたちも楽しめる工夫をしたところ、延べ1300名を超える来場があり大盛況でした。
参加した社員のお子さんが「明日もパパの会社に行く」と言っていた、という声も挙がっています(笑)。ご家族にSansanという会社を知ってもらういい機会になったなと思いますし、家族参加型のイベントも積極的に企画していきたいと考えています。
また、渋谷阿波おどりの前日には、前夜祭として普段お世話になっているお客様をお招きして、オフィスツアーと懇親会を行いました。渋谷駅直結という立地と高層階のロケーションを生かして、大切なお取引先の皆様との交流を深める場としてももっと活用していきたいですね。
進化を続けるParkで目指すもの
Parkという空間をより良く運営していく上で、どのような点を工夫していますか?
さまざまな用途での活用を想定していくことです。開放的な場で業務をしたいという社員もいるので、イベントと日常利用のバランスをどう取るかという点についても日々検討しています。イベントは予約制にして、かつ使用エリアを限定するといった細かいルール作りを進めているところです。社員数の増加に対応することも重要なポイントの一つで、例えば先日の全社会議では、Parkだけで200名以上が集まりました。今後、それ以上の大規模なイベントにも対応できる空間にしていく必要があると考えています。
各部署から「Parkを使ってこんなことをしたい」という要望がたくさん出てきています。そういった要望に対しても、全体最適を考えながらできる限り応えていけるよう、あらゆる観点から検討を重ねています。
今後、Parkをどのように発展させていきたいですか?
交流という大きな目的は変わりません。今後考え続けなければいけないテーマは、「その交流をどう最大化していくか」です。経営陣と新入社員の対話のような「1対多」にしても、1on1のような「1対1」にしても、ヨリアイのような「多対多」にしても、それぞれのコミュニケーションから新たな出会い、そしてイノベーションが生まれることを目指しています。
人事としては、社員エンゲージメントを高める意味でも、Parkは貢献できると考えています。例えば社員が、「自分はBill One事業部のメンバーだ」と思っていることと、「Sansan株式会社の社員の一員だ」と思っていることには大きな違いがあります。チームへの帰属意識ももちろん大切ですが、それと同時にSansan全体への帰属意識も高めたい。社内に部門を超えた知り合いが増えることで会社への愛着も深まりますし、見える世界も広がります。場合によっては異動のきっかけ、事業シナジーのきっかけにもなるでしょう。それは、優秀な人材がこの会社で働き続ける理由になると考えています。
つまり、出会いからイノベーションを生み出すという観点と、エンゲージメントの観点、両方でParkは重要な空間になっているのです。Parkがあることで、コミュニティーが閉じることなく、むしろ広がりを生んでいく。よいこやヨリアイなど、さまざまな制度が循環して、次々と新しいつながりが生まれる。そんな状態を作っていきたいですね。